講座が終了した今でもちょっとした情報交換ができる。仲間がいることがとても心強い

ゼミ1期生にさとゆみがインタビュー。今回お話を伺ったのは、京都でライターをされている江角悠子さん。
つい最近、noteで書くことについてロング対談させていただいたお相手でもあります。
今回は、前回の対談で聞けなかった、ライティングの習慣やスケジュールの管理法などを伺いました。

Q1:京都で活躍されているエッセイスト兼ライターの江角悠子さん。先日の対談で聞けなかったところもお伺いさせてください。改めて江角さんがライターになったきっかけを教えていただけますか?

A1:昔から本が好きだったので、もともとライターになりたかったんです。ただ、就職氷河期のタイミングだったため、出版関係の就職を一度諦めました。それでも、どうしても文章を書く仕事をやりたくていくつか会社を変えていたのですが、4社目の転職で失敗。そこを4日で退職してそのままフリーライターになったのがきっかけです。ライター業を始めて16年経ちました。

Q2:今はどんなお仕事をされているんですか?

A2:大学で「編集技術」という講座をもち、4カ月コースの「書くを仕事に!京都ライター塾」も主宰(6月から7期生募集スタート)しています。そのほかにも、オウンドメディアの記事を執筆したり、企業のメールマガジンの原稿を書いたりと、様々です。

Q3:ライター業のどんなところが好き?

A3:新しいことを知れて、知識欲が満たされるところですね。取材じゃなかったら一生行かないようなところへ行ったり、取材じゃない限り絶対会えないような人に会ってお話を聞いたりできるところ。原稿を書いている最中にも、発見がたくさんあります。

Q4:今までの中で特に印象的だった取材は?

A4:お寺を紹介する記事の取材でお会いした住職さんがとても印象に残っています。その方の前では、すべてを見透かされているような気になって。すごく穏やかな方でしたが、多分悟りを開かれている方だったんでしょうね。何を話しても自分の至らなさをさらけ出してしまいそうで、怖いくらいでした。その方自身のインタビューではなく短い時間だったんですが、同行した方と「すごいね」と話していました。

Q5:以前、仕事の締め切りに絶対遅れないと仰っていたのが記憶に残っています。そのコツは?

A5:推敲にどれくらい時間がかかるか分からないので、締め切りの前日には書き終えたいと思っています。自分の書くスピードやキャパシティもあるので、最初から仕事を入れすぎないように調整しています。目安としては、たとえば取材だと週3回くらいが限度だと思っていますね。断る難しさもあるので、断りたいと思いつつ「何でこんな状況になっているんだろう?」ということもよくありますけど(笑)。

Q6:1日のうち、どのようなスケジュールで仕事に取り組まれていますか?

A6:子どもがいるので、家族の生活に合わせて仕事をしています。子どもが保育園に通っていた頃は9~17時、今は下の子も小学校へ上がって学童へ通っているので8時半~18時は自分の時間で動けるようになりました。午前中の方が集中できる気がするので、書くのは主に午前中です。午後は調べ物や事務作業の時間に充てています。

Q7:書く時のルーティンはありますか?

A7:子どもを送り出した後にじっくりお茶を淹れる時間があり、そこで仕事モードへ切り替えてから専用の仕事部屋で書いています。執筆は、ポモドーロ・テクニックという集中力を高めるメソッドに倣って、タイマーで時間を計りながら25分間集中して、5分間休憩する、という流れで取り組んでいます。集中している間は、インターネットなども一切見ません。毎日配信しているメールマガジンは、1本をその25分間で書き上げられるように意識しています。

Q8:そのメールマガジンの原稿を書くのが毎日の習慣なんですよね。

A8:はい。毎朝瞑想をしているんですけど、瞑想後の整っている朝一番のタイミングで執筆します。締め切りがある原稿は嫌でも書かなきゃいけないので、締め切りがない原稿を、最初にやってしまいたくて。このメールマガジンも、最初は前述のライター塾に興味を持ってもらいたくて、ライター志望の方向けに書いていましたが、最近はHSPなど生きづらさを感じている人に向けた内容になってきました。普段、思いついたネタは忘れないように自分にメールを送ってストックしているので、そこからピックアップして書く感じです。

Q9:習慣化の難しさってあると思うんですけど、毎日書くコツはありますか?

A9:すぐにお伝えできるポイントは3つあります。1つ目は、毎日書くと決めて宣言すること。書くと決めたら書くことが決まっているので、書かない選択肢が無くなります。2つ目は、「歯磨きの後」のように、毎日必ずやっていることと組み合わせること。習慣化で挫けるのは、忘れてしまうことが一番大きな要因なので、すでにある習慣とセットにすることで忘れづらくなります。3つ目は、ハードルを低くすること。たとえば「1時間ランニングをする」だと結構ハードだけど、「ウェアに着替える」とかのスモールステップからなら、やりやすくなると思います。私は習慣化することが好きで、書く以外にも、ラジオ体操やストレッチなど身体を動かす習慣も同じ方法で身に付けました。

Q10:最近、ヒップホップも始めたそうですね。身体を動かすようになって原稿や仕事への影響はありましたか?

A10:ありました。直感じゃないですけど、何かをぽんと思いつくことが増えた気がしています。身体を動かした後に迷っていたタイトルが降ってくる、みたいなこともありました。先日さとゆみさん達と食事した時、別の理系ライターの方からも「身体を動かしている間は脳が活性化するから、色んなことを思いつきやすい」という話を聞きましたよね。その通りだな、と思います。

Q11:話は変わりますが、私のライティングゼミを受けていただいてどうだったでしょうか?(笑)

A11:得られたことは、いっぱいあります。まず、書く仲間と出会えるのは、すごく大きいなと思いました。私のライター塾は少人数制でガッツリ向き合う感じなんですけど、さとゆみさんの講座では20人の受講生がいるので、たくさんの方と出会えますよね。オンラインですが、毎週開催だからか皆どんどん仲良くなって、長年知っている同志のような感覚です。最終回に初めてリアルで講座生と会った時も、初対面とは思えない感じでおしゃべりしました。講座が終了した今でも、facebook上にあるゼミ生同士の質問コーナーで、色んな人が質問してそれぞれが答えるなど、活発にコミュニケーションをとっています。ちょっとした情報交換ができる仲間がいることも、すごく心強いです。

Q12:情報交換って、すごく大事ですよね。たとえばどのような話がありましたか?

A12:原稿料の話とか(笑)。ライター塾をしていても、皆さん気になるし、どうなんですか?ってよく聞かれますよね。私も以前まで、雑誌だと原稿料が決まっていると思っていて、交渉ができるということを知らなかったんです。雑誌が発行されてからギャランティーを知ることもありました。そんな感じだったので、ウェブの仕事を始めた頃に初めてこちらから見積を出したんですよね。ウェブライティングでは1文字あたり何円という仕事もあるみたいですが、私は作業量と時間を想定して、そこから積み上げた見積金額を提示しています。今回出会えたライター仲間ともそんな話をしましたが、もっともらっている方もいらっしゃいますし、上には上がいるっていうのは良いことだな、とも思いました。

Q13:ほかに、ライティングゼミで気付かれたことなどはありましたか?

A13:原稿面で勉強になったのは、「小骨を抜く」テクニックですね。原稿を書いた後に360°見渡して、読んで不快になる方がいらっしゃらないか、インタビューに答えてくださった方が言い過ぎだと思われないか、などの視点で見直すことを講座の中で学びました。小骨を抜くことは意識しているつもりでしたが、添削してもらったのを見て、まだまだ甘かったなと思い知りました。その感覚に触れられたのは、すごく良かったです。

Q14:先日、ライターの堀香織さんがまとめてくださった私たちの対談も「小骨」がまったく残っていない状態でしたね。

A14:本当にそうでしたよね。講座でさとゆみさんからも、「ライターの役割は『A』ということが語られた時に『A』と書くことではなく、一番響きやすい日本語で伝えられるよう『A’』なり『A”』と翻訳して書くことだ」とお話がありました。今回の堀さんの原稿は、まさにこちらの意図は変えず上手に言い換えた表現をされていて、それでいて「小骨」も抜かれている。勢いはあるのにトゲの無いとても素晴らしい文章でした。そういう細かいことが大事なんだと思いました。

Q15:今回、講座の中で原稿を添削させてもらいました。えずさんのようなベテランの方に添削させていただくのは、結構こちらもプレッシャーだったのですが(笑)、いかがでしたか?

A15:とてもありがたかったです。なぜかと言うと、ウェブメディアは編集者さんが不在の媒体も多いので、そのまま原稿が通ってしまうことも多く、添削で赤字を入れてもらう機会も減っていたんです。
今回私は、仕事を調整して時間を空けて参加したんですよね。せっかく添削してもらえるなら、力尽きて出した原稿ではなく、全力で書いた原稿を添削してもらいたいと思って。講座の課題は大変でしたが(笑)、一方で、受講者数も多いので、少し引いて参加できる気楽さも程よかったです。その中で、120%で書いた原稿をしっかり添削してもらえて、とても勉強になりました。2期に応募される方には、ぜひ、時間をちゃんと確保して、全力で書いた原稿を添削してもらうといいですよとお伝えしたいです。


(構成・文/ウサミ)

プロフィール
江角悠子(えずみ ゆうこ)

京都在住 エッセイスト・ライター/ときどき大学講師

さまざまなウェブメディアや『anan』『婦人画報』などの人気雑誌で執筆。2017年に出版された仲間との共著『京都、朝あるき』が好評発売中。また、同志社女子大学で非常勤講師として編集技術を教える他、ライター同士の研鑽とつながりを作る場「ライターお悩み相談室」も開催。2020年からはライターを目指す人を応援するべく「書くを仕事に!京都ライター塾」をスタート。2020年1月にライティングを担当した本「亡くなった人と話しませんか」が発売。増刷を繰り返し、現在は9万部!