「エピソードが1つ聞けたら大丈夫」という言葉が取材のお守りになりました

さとゆみビジネスライティングゼミ3期を受講された、「なおちゃん」こと岩崎尚美さん。岩崎さんは宮城県仙台市を拠点に活動するフリーライターです。地方でお仕事を獲得するコツやゼミでの思い出をさとゆみがインタビューしました。

A1:火曜コースを受講しておりました、岩崎尚美と申します。宮城県仙台市に住んでいるフリーライターです。ライター歴は大体7年目くらいだと思います。
ライターになる前は、社員が10人もいないような小さな会社で事務員をしていました。私一人で、簡単な経理や総務のようなことをしていました。その前は、コールセンター系の会社に長く勤めていました。

A2:私は大学を中退していて、中退後はアルバイトや契約社員という雇用形態でお仕事をしていました。あるときふと、「夢中になって、もっと頑張りたいと思えるような仕事をしてみたい」と思うことがあったんです。どんな仕事にもやりがいがあるし、それまでの仕事にももちろんやりがいを感じていました。でも、心から好きだと言える仕事をしてみたいなと。

それで、どんな仕事がいいのか考えていたときに、小さい頃から文章を書くことが好きだったと思い出しました。当時、Twitterで交流のあったママ友さんがたまたまライターのお仕事をしていたこともあって、「文章を書く仕事があるんだ。私もやってみたいな」と思うようになりました。それが最初にライターを目指したきっかけです。

A3:ライターを目指したものの、一回は諦めてしまったんです。もう一度挑戦してみようと思ったのは、それから何年か経ったあと。でも、まだ子どもも小さかったし、出版社や編集プロダクションに就職するのはちょっと難しそうだなと感じました。なので、フリーランスでライターの仕事をするためにはどうしたらいいのだろうと、インターネットで情報収集するところからスタートしたんです。

7年前は、ちょうどブログが流行っていた時期。私もブログやSNSのアカウントを作って、発信をしていました。インターネットでは、「お仕事をいただくためには、発信力を強化して編集者さんに見つけてもらうことが大事!」とよく言われていたんです。

ほかにも、オンラインで受けられるライティング講座を受講しました。当時はオンラインで受けられる講座が少なかったので、探すのも一苦労でした。

それから、クラウドソーシングにも登録しました。単価の低い案件ばかりでしたが、とにかくできることからチャレンジしていきました。次第に名前の入る記事が書けるようになって、少しずつ実績が溜まっていったんです。その実績を引っさげて、ライターの募集をしている会社さんに連絡を入れて、少しずつお仕事を増やしていきました。

A4:私は、最初から取材のできるライターを目指していたんです。でも、クラウドソーシングの案件には、初心者でもできるような取材のお仕事があまりありませんでした。

ライターの仕事を始めて一年くらい経った頃、地域の経済誌でライターを募集しているのを見つけたんです。私が普段読まないような難しいジャンルの雑誌だったので、採用されないだろうなと思いましたが、ダメ元で連絡してみました。そうしたら、たまたま採用していただけたんです。その雑誌の編集者さんに、取材について手取り足取り教えていただきました。赤字もがっつり入れてくださったので、打ちひしがれることもありましたが、とても勉強になったと思います。

A5:ちょっとずつ広がっていったと思います。私は自分のWebサイトがあるので、そこからお仕事のご連絡をいただくことも多々ありました。たとえば、東京の会社さんが仙台で取材があった場合に、現地で取材に行けるライターさんはいないかインターネットで探すことがあるようなんです。県外の会社さんが、私のWebサイトやSNSを見つけてお仕事を依頼してくださるケースがたくさんありました。

A6:取材は毎回楽しいです。記事を書くためにお話を聞いているのですが、いつも私のほうが勇気をもらっています。取材相手の方は、大きなチャレンジをしたり、何かを成し遂げた方が多いので、皆さんの話を聞くたびに「すごい考え方だな」と感動しています。

A7:編集者さんにいろいろと教えていただいたものの、ライティングについては独学で仕事をしてきてしまったので、そもそも基礎が身についているのかどうかずっと気になっていたんです。それに、この先も長くライターとして仕事をしていきたいと思っていたので、そろそろ学び直しをしたほうがいいんじゃないのかと考えていました。

ライターになる前に一度オンラインでライティングの講座を受けましたが、それ以降はあまり学びの場に足を運んでいませんでした。というのも、まずは自分で試してみないとわからないし、何もわからない状態でたくさんの講座を受けても、私の場合はあまり身にならないような気がしていたんです。でも、今だったらある程度ライターの経験も積んできたし、講座から得られることがたくさんあるように感じて。当時と違ってオンラインの講座も増えてきたから、改めてライティングの講座を探してみることにしました。

さとゆみさんのことは以前から知っていました。講座を開講していることも耳にしていましたが、なかなかタイミングが合わなくて。今回、たまたま募集をしているのを見かけて、「さとゆみさんならいいな」とふんわり思ったんです。せっかく講座を受けるなら、「この人から学びたい!」と思える方が講師をしている講座がいいなと考えていました。「私は絶対に受かる!」という謎の自信とともに、今回申し込みしたんです(笑)。

A8:たぶん、最初にさとゆみさんを知ったのは、さとゆみさんが何かの本に載せるために、一般の方のコメントを募集しているときだったと思います。私、そのコメントをさとゆみさんに送ったんですよ。

A9:そのあとも、Webメディアの記事などでさとゆみさんのお名前はちょこちょこ見かけていました。インタビュー記事を読んだりして、「この人の考え方、好きだな」と思っていたんです。

A10:イメージが変わった、ということはなかったです。「思っていたよりも明るい」とも思いませんでした。いい意味で「思っていた通り」だったなと思います。

でも、インタビュー記事などの文章を通して接していたさとゆみさんは、少しふんわりとした印象があったんです。だけど、実際に講座でお話を聞いてみると、ストイックというか、強さを感じました。仕事や文章に対する考え方は、とてもガッツのある方だなと思いました。

A11:途中まではすごくしんどかったです。ゼミが始まってすぐに書いた「推し原稿」の課題のあたりから、「これは大変だぞ」と感じていました。私は、インタビューで聞いた話をまとめるのは苦ではありませんが、自分の中から何かを引き出すのがすごく苦手なんです。「私には何もない」と思ってしまうようなところがあって……。何もないのなら、せめて平均点が取れるくらいの卒のない原稿を書かなくちゃと、気負ってしまいました。でも、うまい原稿が書けているかどうかわからなかったし、どんどん良くないループに入ってしまったんです。

けれど、ゼミの後半、「なおちゃん、大丈夫?」と同期の方が声をかけてくれました。その方と話しているうちに、気持ちが楽になっていったんです。卒なく上手な原稿を書かなきゃと思っていたけれど、ゼミは挑戦する場所だし失敗してもいい。むしろ、そんな考え方が必要なのかもしれないと気づくことができました。それからは、楽しく受講できるようになったかなと思います。

A12:基本的なことでは、「一文を短くする」ことです。さとゆみさんは、一文の長さを50文字以下で設定されていたかなと思います。私も普段から一文を短くするように意識して書いていましたが、もう少し長めでも許容していました。だから、50文字以下はだいぶ短いなと思って。でも、「短いほうがわかりやすいよね」と自分でも再認識して、50文字くらいの短さで書こうとさらに気をつけるようになりました。

それから、誰かを傷つける表現がないか「小骨を抜く」ことも、一層気をつけるようになりました。これまでも、誰が読んでも嫌な気持ちにならないような文章を書くことを常に意識していました。でも、その行動に「小骨を抜く」という名称がついたことによって、より意識が向くようになったなと感じています。

A13:勉強になったことはいくつもあります。特に聞けてよかったのは、「2000字程度の原稿なら、取材で良いエピソードが1つか2つ聞けていれば十分」というお話です。

私は同時にいろんなことができなくて、「取材中に話を聞きながらメモを取って、次の質問を考える」ことがすごく苦手なんです。話に集中しようとしているのですが、頭の中が「あれもこれも聞かなきゃ!」と忙しくなってしまうと、ちゃんと集中できなくって。それに、「この話を掘ったら面白そう」という部分があっても、いろんなことを聞こうとするあまり深掘りができないこともありました。

でも、さとゆみさんから「エピソードが1つあれば大丈夫」と聞いてからは、取材の場の雰囲気を大事にできるようになりました。「エピソードが1つあれば大丈夫」とおまじないのように唱えながら、落ち着いた気持ちでインタビューできるようになったのは、すごくよかったなと思います。

A14:私も、取材中にパソコンでメモを取ることはしません。パソコンでメモを取ることを嫌がる取材相手の方もいらっしゃると思うんです。もちろん、嫌がらない人もいるし、中には「パソコンでメモを取ったほうが早いのに」と思う人もいると思います。でも、嫌がる人がいるというリスクを考えたら、やらないほうがいいなと。

A15:すごく印象に残ったのは、「シーンが浮かぶように原稿を書く」というお話です。映像が浮かぶように書くことをこれまであまり意識したことがなかったので、とても面白いなと感じました。課題でも、「エピソードから書き始めてください」という原稿がありました。私はあまりうまく書けませんでしたが、皆さんの原稿を読んでとても引き込まれて、「これはすごい手法だな」と感じたんです。

先日、さとゆみさんと山崎拓巳さんのインスタライブで、「情景が浮かぶ文章の書き方」のようなお話があったと思います。さとゆみさんが「テレビ業界出身だから、再現VTRが撮れるような書き方をしている」というようなことをおっしゃっていて、わかりやすいなと感じました。私も実践してみようと思っています。

A16:ゼミで、さとゆみさんが「シーンを聞くと、取材相手の方がその場面を思い出して、より深い気持ちを話してくれる」とおっしゃっていたのも印象的でした。

さとゆみさんから「シーンを書く」という話を聞いたとき、「そもそもシーンって書く必要があるのかな?」と少し考えていたこともあったんです。でも、シーンを意識しながら世の中に出ている記事を読んでみると、たしかにシーンがたくさん書かれているなと気づきました。

A17:私もインタビューでシーンを聞いてみようと思って、質問してみたんです。でも、取材相手の方によっては「なんでそんなこと聞くの?」という顔をされてしまって……。

A18:いくつかお聞きしたいことがあって、まず一つ質問させてください。

さとゆみさんが、取材相手の方に気持ち良く話してもらうために工夫していることがあれば教えていただきたいです。

以前のTwitterスペースで、さとゆみさんは「インタビュー中は基本的に身体を動かさない」とおっしゃっていました。私、それが少し意外だったんです。課題でさとゆみさんへインタビューさせていただいたときや、ゼミの間も、わりとさとゆみさんはボディランゲージが多いなと感じていて。だから、インタビュー中も身体を動かしていらっしゃるのかなと思っていました。取材相手の方に気持ち良く話していただくために、「あなたの話に興味を持っています」という姿勢を、動きで示しているのかなと勝手に考えていたんです。

私はあまり微動だにせず取材をしていたので、取材相手の方に楽しく話してもらうためには、何か動きを取り入れたほうがいいのかなと考えていました。

A19:相手の方のペースに合わせる、ということでしょうか?

A20:たまに、取材でずっと話してくださる方がいらっしゃいます。話してくださるのはありがたいのですが、聞きたいことが聞けないときもあって。そういうときは、あえて居心地悪く感じてもらうようにするのも一つの手なんですね。

A21:もう一つ、「タグ付け」について質問させてください。ゼミでゲスト講師の方が「自分にタグを付けることで仕事が広がった」とお話しされていたのがとても印象に残りました。

私は、自分から「これが書けます!」と発信するのではなくて、編集者さんのほうから「この仕事どうですか?」と打診されてお引き受けするスタイルが多いんです。でも、今後の活動を考えると、何かタグを付けたほうがいいのかなと考えてしまって。もちろん、タグを付けることが全てではないと思うんですけど。

A22:ゲームが好きなので、元々シナリオを書く仕事をしてみたかったんです。何回かシナリオを募集している会社さんにシナリオを送ってみたものの、なかなか仕事に結びつきませんでした。でも、ずっと「シナリオを書きたい」と言い続けていたら、コロナ禍に入ったくらいのときに、知り合いの方が「シナリオの公募が出ていましたよ」と教えてくださったんです。その少し前にシナリオ講座を受講していたので、久しぶりに応募してみました。講座での学びが活きたのか、採用してもらえることになって、それをきっかけにシナリオのお仕事がちょこちょこと広がっていきました。

A23:でも、何かに絞ったほうがいいのかなと思うことも時々あって。

A24:はい、嫌ではありません。楽しくお仕事させていただいています。

A25:ブックライティングにチャレンジしてみたいなと考えています。一度も携わったことがないので、どうすればいいのかまだ何もわからないのですが……。でも、自分の中にあるものを書くよりは、何か伝えたいことのある方のお手伝いをするほうが、私には向いているのかなと思っているんです。

A26:はい。みなさんとお話ししてみます。


(構成・文/玄川 阿紀)

プロフィール
岩崎尚美(いわさき なおみ)

宮城県仙台市を拠点に活動するフリーライター/シナリオライター。ライターとしては、地域の経営者インタビュー、店舗取材、セミナーレポートなどを行う。またメディアでの執筆のほか、ホームページやパンフレット用の文章、プレスリリースの作成など、企業広報のサポートもしている。シナリオライターとしては、主にスマホアプリや音声作品などのプロット、シナリオを制作。ひとり旅にハマり始めた2児の母。

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