さとゆみゼミは、僕の人生のターニングポイントになると確信しています
さとゆみビジネスライティングゼミ3期を受講された、「ヒロ」こと中村昌弘さん。中村さんは、SEO記事の執筆やKindle本の作成、オンラインコミュニティの運営など、多岐にわたって活躍されています。ゼミの思い出や現在のお仕事に至るまでの経歴を、さとゆみがインタビューしました。
Q1:ヒロさんはどんなきっかけでライターになったんですか?
A1:新卒でマンションディベロッパーに勤めたあと、人事系の会社に転職しました。そのときに、心を病んでしまって退職したんです。会社を辞めて2、3ヶ月後、勤めていた会社のクライアントさん経由で新卒採用の仕事をいただけたので、人事コンサルタントとして独立することにしました。
でも、人事コンサルタントの仕事の一本槍では激弱だし、何か副業をしようと考えたんです。インターネットで副業についていろいろと調べているうちに、いわゆるWebライターという仕事があると知りました。それで、クラウドソーシングに登録して、ライターの仕事を始めたという感じです。2016年2月頃のことでした。
実は、大学は文学部日本文学科を卒業していて、本を読んだり、レポートを書いたりすることがわりと好きだったんですよ。
Q2:大学では何を専攻していたんですか?
A2:一応、宮沢賢治を専攻していました。でも、僕はアメフト部に所属していて、部活三昧だったので、授業のことはマジで何も覚えていないんです。まるで仕事かのように部活ばかりしていました。卒論も書いていません。卒論の代わりに追加で10単位を取って、卒論を免れました。
Q3:社会人になってからは、アメフトを続けなかったんですか?
A3:母校の大学と、もう一つ別の大学でアメフトのコーチをしていました。アメフト部時代の恩師に「やるよね」と押し切られて、断れずに引き受けてしまったんです。会社で働きながら、土日は大学に行って指導していました。独立したあとも2年くらい続けていたと思います。
Q4:ヒロさんはチームビルディングがすごく上手いなと感じていたんです。チームスポーツの経験があると聞いて、腹落ちしました。
Webライターを始めて、仕事がうまく回るようになるまでは、どんな工夫をしていたんですか?
A4:最初は、文字単価0.3円くらいの低単価な案件しか通りませんでした。うまく回るようになったのは、不動産の分野に特化しようと決めてからです。マンションディベロッパーに勤めていたので、その経験を活かそうと思いました。少しずつ実績と知見を積んで、次第に単価の高い案件に受かるようになっていったんです。それが2018~2019年頃でした。
お金に関する不安はそれほどなかったと思います。人事コンサルでそこそこ食べられるお金を稼げていたし、豪遊するような生活をしていたわけではなかったので、一旦このまま続けていこうと、超楽観的思考で仕事をしていました。
人事コンサルの仕事をやめてライターを専業にしたのは、2020年3月からです。
Q5: SEOライティングの一番のポイントはどこですか?
どんどん案件を取って単価を上げていく人と、なかなか案件が取れずに単価を上げられない人の違いは、どこにあるんでしょう?
A5:ポイントは2つあると考えています。
1つはシンプルにライティング力、もう1つはジャンルです。
SEOライティングはジャンルに大きく左右されると思います。僕が書いている不動産のジャンルは、基本的に単価が高いんです。メディアがお金を稼ぎやすいジャンルの記事は、単価が高くなります。ちなみに、僕が稼ぎやすいと考えているジャンルは、不動産のほかに、金融と、薬機法が絡む美容・医療です。
なので、ライティング力が10あったとしても、月の収入が30万円になるか、5万円になるかは、案件のジャンルによって変わってくると思います。
Q6:なるほど、よくわかりました。ヒロさんは「Webライターラボ」というオンラインコミュニティを運営していますよね。どうしてノウハウを教えようと思ったのですか?
A6:当初、Webライティングのノウハウを人にお伝えしようという気持ちはそれほどありませんでした。お客様からオファーが殺到するライターになるにはどうしたらいいのかなと考えていたときに、Twitterのフォロワーを増やせばいいんじゃないかなとひらめいたんです。まあ、今振り返ると間違った考えなんですけれど……。でも、当時は少しでも役に立つような発信をすればフォロワーが増えるんじゃないのかなと思っていたので、これまで培ってきたノウハウをTwitterで呟くようになりました。本格的にTwitterを開始したのは、2020年3月、4月頃ですね。
Q7:実際にフォロワーは増えたんですか?
A7:ノウハウを呟くだけでは、なかなか増えませんでした。
そこで、何か手っ取り早い方法をないかなともう一度考えて、「そうだ、フォロワーが多い人に絡もう」と思いつきました。つまり、インフルエンサーに営業をかけたんです。
たとえば、YouTubeをやっているインフルエンサーさんに、「YouTubeの内容をnoteにまとめませんか? 全部無料で書くので、代わりに僕のことを一回ツイートで紹介してください」と提案しました。どうしたらインフルエンサーと呼ばれる人たちと仕事ができるのか考えたときに、断る必要がない提案をすればいいんじゃないかなと思ったんです。でも、相手は僕のことなんて知らないし、「誰やねん、お前」と言われそうだったので、事前に相手のYouTubeを全部見て、先に構成案を作ってお見せしました。仕事につながるかどうかわからないけれど、先にアウトプットを用意しておかないとそもそも話にならないんじゃないかなと思ったんです。
60~70人くらいのインフルエンサーさんに声をかけて、仕事につながったのは5人くらい。2つ目の案件以降はお金をいただいて仕事をしていました。
Q8:さすが! そんな提案されたら、私ならお願いしちゃうと思います(笑)。
インフルエンサーさんとお仕事をするようになって、フォロワーが増えたり、お仕事の依頼が来るようになったりしましたか?
A8:フォロワーは増えましたが、仕事の依頼はそれほどありませんでした。
厳密に言うと、営業をかけたインフルエンサーの方からは仕事をもらえたけれど、新しいクライアントさんからの依頼はあまりなかった、という感じです。半年~1年くらいやってみて、Twitterのフォロワーを増やすことでメディアの運営者さんから仕事をもらう戦略は、あまり意味がなかったなと感じました。フォロワーを増やすために、インフルエンサーと絡んだり、情報発信をしたりすることが、必ずしもメディア側や発注者側にポジティブに映るわけではなかったのだと思います。
Q9:インフルエンサーさんたちとは、どんな仕事をしていたんですか?
A9:主に、Kindleで出版する電子書籍の執筆・編集の仕事をしていました。
インフルエンサーさんのほうから「Kindleで販売する電子書籍を作ってほしい」と提案があったんです。電子書籍を作ったことはありませんでしたが、とりあえずやってみようと、引き受けることにしました。YouTubeにすでに置いてあるコンテンツを2~3万字のKindle本にするような仕事だったので、SEOライティングの考え方を応用して取り組んでいました。
僕にとって、Kindle出版に関わったことは大きなターニングポイントになったと思っています。初めてKindle本の案件をゲットしたのが2020年9月で、ライターになって5年目でした。その頃、SEOライティングに少し飽きてきてしまっていたんです。Kindle本を作ってみて、ライターの世界にはブックライティングという仕事があるのだと知り、とてもキャリアが広がりました。
それから、「○○さんのKindle本を編集しました」というわかりやすい実績を得たことによって、案件に通りやすくなったこともよかったです。
Q10:Kindleの編集は、難しくありませんでしたか?
A10:インタビューが入るパターンの原稿はとても難しかったです。
インフルエンサーさんの本を作る場合は、YouTube等にすでにコンテンツがあるので、インタビューをする必要はありません。でも、たとえば不動産会社の代表の方の本を作るような場合は、そもそも元にするコンテンツがないことがあるので、インタビューをして素材から集めなくてはいけないんです。「Kindleを出してみたいけど、何を書けばいいのかわからない」と言われることもあって、企画やテーマから考えなくてはいけないときは結構大変でした。
Q11:本格的にWebライターさんを育てようと思ったのはいつ頃なんですか?
A11:2020年の年末頃だと思います。ノウハウを提供することでマネタイズできないかなと考えるようになりました。
最初は、インフルエンサーさんに「一緒にWebライター向けのコンテンツを売りませんか?」と声をかけてもらったんです。でも、コンテンツは作ったものの、いろいろあって頓挫してしまって……。ありがたいことに、そのインフルエンサーさんから「コンテンツは中村さんにあげます」と言っていただけたので、『WritingBegin』という名前をつけて無料で公開することにしました。それが2021年3月、4月頃のことです。せっかくだから他にもいろいろやってみようと、メルマガを始めました。だんだんメルマガを読んでくれる方が増えて、読者さんたちに何かできないかなと、ライティングについて学ぶオンラインコミュニティを立ち上げたという感じです。
Q12:ところで、ヒロさんは、どうしてうちのゼミを選んでくれたんでしょう? ライティングを学ぶ場所はいろいろとあると思うけれど。
A12:実は、さとゆみゼミと上阪徹さんのブックライター塾の二つで迷っていたんです。宣伝会議さんのさとゆみさんと能勢邦子さんの講座を聞いたことが、さとゆみゼミを選ぶ決め手になりました。講座の話がとてもわかりやすくて、面白かったんです。元々さとゆみさんの実績は知っていたし、『書く仕事がしたい』という本も読んでいました。さとゆみさんから学びたいなと思って、ゼミに申し込みしたんです。
Q13:ゼミを受けてみて、どうでしたか?
A13:さとゆみさんから赤字をいただけたことがよかったです。ゼミ生全員に赤字を入れてくださるので、自分だけでなく、他の人の文章とその赤字から得られる発見もたくさんありました。書籍を読んでライティングを学ぶこともできると思いますが、ゼミで実際に文章を書いて、それに赤字をもらうことで、より実践的に文章力が磨けたと思います。
それから、文章への向き合い方が大きく変わりました。さとゆみさんは、「文章によって態度変容を起こす」というお話をよくしているかと思います。つまり、「読者の習慣や行動を変えたりするような文章を書きましょう」というお話です。お恥ずかしながら、SEO記事を書いているとき、僕はそこまで考えていませんでした。もちろん読者の方をイメージすることはありますが、情報を提供するという意識が強くて、情報を提供したあとの態度や行動を変えようという視点をあまり持っていなかったんです。これからは、読者の態度変容を起こすような記事を書いていこうと、心から思いました。
先ほど、Kindle編集に携わったことが僕のターニングポイントだと話しました。5年後、過去を振り返ったときに、さとゆみさんのゼミも間違いなく僕の人生のターニングポイントになっていると思います。
Q14:あら、それはうれしい。本当にうれしいです。
この先、ヒロさんはどうしていくつもりなんでしょう?
A14:どうしましょう、どうすればいいんですかね……。
さとゆみさんへのインタビューのあとも、僕の相談会のようになって、いろいろ話を聞いてもらいました。ゼミの最終回のときも、どんなライターになりたいか明確にできなかったんですよね。
今も明確な結論が出ているわけではありませんが、もっと自分の思想や思いを乗っけるライティングをしていきたいと、漠として思っています。情報を整理して届けることも、それはそれで素晴らしいことだと思っていますが、これからは今まであまり触れてこなかったインタビューライティングやセールスライティングに挑戦していきたいです。読者の行動を変えるようなライティングをしていけたらいいなと思っています。
Q15:ヒロさんは、必ず日本を代表するライターになると思います。
でも、一番心配なのは身体です。ヒロさんは、家に閉じこもりがちだし、夜中まで仕事をしちゃう。食事もわりといい加減だから。外に出て、ちゃんと寝て、しっかりご飯を食べてほしい。自分のメンテナンスさえきちんとできれば、ヒロさんはものすごいライターになると思う。定期的にゼミのメンバーと関わって、ちょっとでも外に出てほしいな。
A15:さとゆみゼミからもらったものは、「さとゆみさんの赤字」と「文章への向き合い方の変化」のほかに、もう一つ「コミュニティ」があるなと思います。先日、同期のみんなと飲みに行ったんです。正直、ここまで仲良くなると思っていませんでした。
利害関係がない、けれども共通言語がある。そういう人間関係ってあまりないと思うんです。仕事だと発注者と受注者で上下関係ができてしまう場合があるし、オンラインコミュニティも、オーナーとメンバーという立ち位置では、どうしてもヒエラルキーが発生してしまう。だから、利害関係のない「同期」のような関係ってめちゃくちゃ貴重だなと感じました。ゼミの初回でさとゆみさんが「一生付き合っていく仲間になる」と話してくれたときは、あまり理解できていなかったんですけど、今はすごくよくわかります。本当にゼミに入れていただけてよかったです。
Q16:そうだね。ゼミの最初に「今はピンと来ないかもしれないけれど、 3ヶ月後めちゃくちゃ仲良くなっているし、一生付き合う仲間になるよ」という話をしましたね。
ゼミを受けていて、印象に残っている赤字はありますか?
A16:赤字をもらえたことはすごくうれしかったんですけど、さとゆみさんに褒められたことが、まずすごく記憶に残っています。僕、さとゆみさんが褒めてくれたシーンを画面録画して保存しているんです(笑)。
数日前に、ゼミの課題や動画を見返していたんです。褒められたことばかり注目していましたが、ご指摘もたくさんいただいていました。一番ご指摘をいただいたのは、さとゆみさんへのインタビュー課題。僕は、さとゆみさんの話を自分の言いたいことにねじ曲げて書いてしまったんです。久しぶりに読み返してみたら、自分でも主張が強すぎてダメだなと改めて思いました。たぶん、ライティング以外の場面でも、自分の主張が強く出過ぎてしまうところがあるのだと思います。赤字を抽象化して、なんなら自分のプライベートまで見つめ直しました。
さとゆみさんのご指摘に、もちろん反論の余地はございません。ぐうの音も出ませんでした。「ありがとうございます!」という感じです。
Q17:褒められた場面を録画しているの、面白すぎます。めっちゃツボ(笑)。
私がゼミであの指摘をしたとき、ヒロさんは「はい、おっしゃる通りです!」とものすごく潔い反応をしていました。ヒロさんは、事実と感想を切り分けられるのがいいなと思っています。この前もnoteに「こんなことを書いたら、みんなは僕のことをへこんでいると思うかもしれないけど、へこんでいるんじゃなくて考えているんです」のようなことを書いていました。事実と感想を切り分けられるから、どんどん新しいことを考えられるんだろうね。
(※ヒロさんの書いたnote:『七言(ななこと)日記を書こう~さとゆみゼミを終えて~』)
インタビューライターになると、その切り分けができない場合はかなりの致命傷になると思う。一ヶ所赤字が入っただけなのに、全部がダメだと思ってしまったり、原稿を指摘されただけなのに、自分自身のことをダメだと言われたように思ってしまったりする可能性があるから。切り分けて考えるのはとても大事なことです。
それから、ヒロさんは原稿も自分に対しても、引かないし、盛らないなと思います。「僕はこんなにすごいんだ!」とひけらかさないし、かと言って「僕なんか……」と卑下することもしない。「これをやりました」という事実を淡々とてらいなく話せるところが才能だなと感じています。
A17:ありがとうございます。卑下せず、でも傲慢にならないように、客観的に見ることを日頃からめちゃくちゃ意識しています。
Q18:それにしても、褒められた場面を録画しているのは面白いライフハックです。初めて聞きました。
A18:自分が褒められたところをストックしておいて、仕事でへこんだときに聞き返しています。このTwitterライブも、褒められた部分だけ録音して、無限リピートする予定です(笑)。
Q19:(爆笑)。私は、褒められたときはあまり見返さないようにしているんです。Amazonのレビューは、低評価のレビューをしっかり読んで、高評価のレビューは1回しか読まない。昔から褒められることが苦手なんです。褒められると、それを意識してしまって、もぞもぞしちゃう。
でも、ヒロさんのライフハックは具体的でとてもいいなと思いました。編集している姿を想像すると、笑っちゃうけれど(笑)。
A19:でも、1つ弊害があります。褒められたところばかり見過ぎると、指摘されたことを忘れてしまうんです。この前、さとゆみさんから褒められたところを見返していたら、肝心の指摘されていた部分をすっかり忘れていました。赤字や直したほうがいい部分が、すっかり脳から消え失せてしまっていて、「あ、やべ、忘れてた」と(笑)。弊害もセットで、皆さんにこのライフハックを使っていただけたらと思います。
Q20:そこがヒロさんの良いところです(笑)。どんな弊害があるのかも俯瞰して見られるのは、なかなかすごい能力だと思います。両論併記というのかな、メリットとデメリットをきちんと分析できている。ビジネス脳なのかなと思います。
ヒロさん、今日何か話そうと思っていたことはありますか?
A20:よかったら、 3つ質問させてください。
1つはインタビューについてです。課題でさとゆみさんへインタビューをさせていただきました。僕のインタビュー、どうでしたか? ダメ出しというかアドバイスをいただけないかなと思って。
Q21:ヒロさんのインタビュー、とても良かったですよ。ヒロさんはそんなにインタビューが得意じゃないと言っていたけれど、どこに出ても心配ないインタビュアーさんだと思いました。もし「ビジネス系のブックライターさんを探しているんだけど、いい人いない?」と編集者さんから聞かれたら、いつでもヒロさんのことを紹介できるなって。
ヒロさんからインタビューを受けていて、事前に用意した質問だけじゃなく、その場の流れに乗っかって臨機応変に繰り出した質問があったなと思いました。「用意した質問を全部こなさなきゃ!」というガチガチな雰囲気は感じられなかった。ちゃんと深掘りしてくれていたし、話を聞いてもらっている感じがしました。
A21:ありがとうございます。自信になりました。
2つ目の質問です。さとゆみさんがライター駆け出しの頃、ライティング力を上げるためにどんなトレーニングをしていらっしゃいましたか?
Q22:ライターになって、2ヶ月くらいは、うまいと言われている人の原稿をパソコンで写経していました。編集者さんに「この雑誌で一番うまいライターさんは誰ですか?」と聞いて、その人の文章をひたすら書き写していたんです。
それから、言葉のストックを集めていました。ファッションのページ、ビューティのページ、ダイエットのページと、雑誌のいろんなところから面白い表現を集めて、書き写していました。その言葉のストックが、たぶん3000個くらいあったと思います。集めた言葉を「可愛い」「クール」「大人っぽい」などとカテゴリー分けして、プリントアウトして部屋中にバーッと貼っていました。原稿を書くときは、そのストックを見ながら「クール系の良い表現ないかな」と探したりしていたんです。そんなふうに、雑誌でよく使われる言い回しや面白い形容詞の使い方をメモして、表現の引き出しを増やすようにしていました。
書籍ライターになってからは、いろんな人に原稿を読んでもらっていました。母やライター仲間、異業種の友達に「はじめに」や第一章だけ読んでもらって、わかりにくいところがないか、提出前に見てもらっていた気がします。
私はわりと、意見をもらうとすぐに改善するタイプなんです。とんちんかんな意見もあるかもしれないけれど、とんちんかんなことを言わせた原因は、必ず原稿にある。炎上してしまったり、変に絡まれてしまったときも、助詞を一つ変えれば防げたり、ここで読点を打っていたら絡まれなかったというケースが多々あるんです。原稿のほうに改善できる余地があると思います。
私の書いた本『女の運命は髪で変わる』も、美容メーカーに勤めている友達に読んでもらいました。その方に「すごく面白かったけれど、私は『ファッション誌の編集長は、新しいモデルが入ってきたら、最初に美容院に行かせる。なぜなら、どんなにスタイルが良くて、美人でも、まず髪の毛を垢抜けさせないとプロのモデルにはなれないから』という話が一番面白かった。これを前に持ってくるのはどうですか?」と言われたんです。それを聞いて、すぐに原稿の順番を入れ替えました。彼女に改稿も読んでもらったら、「こっちのほうがワクワクします」と言ってくれたんです。『女の運命は髪で変わる』は8万部くらい売れましたが、順番を変えなかったらそこまで売れていなかったと思います。彼女はその後、私の講座を受けにきてくれたので、ゼミの先輩ですね。
『ママはキミと一緒にオトナになる』の「はじめに」も塚田智恵美ちゃんに何度も読んでもらいました。たくさんの人の意見を聞くわけではないけれど、しっかり読んでくれる方にお願いして、その意見は聞くようにしています。
A22:僕はずっと孤独に文章を書いてきたので、あんまり友達がいなくって。大人になってから友達を作るのって難しいなと感じています。でも、さとゆみゼミの同期だったら、これからも互いの文章を読み合ってアドバイスすることができそうだなと思いました。
Q23:智恵美はゼミの卒業生だけど、今は仲間だと思っています。友達というよりは、仲間という感じ。みんなのことも卒業したあとは仲間だと思っているから、そのうちヒロさんに「この原稿、どう思う?」と突然聞きに行ったりするかもしれません。
さっき、ヒロさんが「利害関係のない仲間はなかなかいない」と言ってくれたけど、私も本当にそう思うんです。私は「利害関係のない友達」を佐藤尚之さんの「さとなおラボ」で作りました。 さとなおラボで出会った人たちはとても大切な仲間です。さとなおラボでは、人生において仲間がいることがどれだけ重要かを教えてもらいました。上阪徹さんのブックライター塾の同期もそう。学びの場が一番友達を作りやすいのかなと思います。
うちのゼミは、「文章がうまくなりたい」という同じ目的で集まっているから、深く結びつきやすいのかなと感じています。
ゼミでは毎回、ブレイクアウトルームを作って、みんなにディスカッションしてもらう時間を設計していました。ブレイクアウトルームの組み合わせや、そこで話し合ったことを誰がみんなの前で発表するかといったことは、毎回同じ人にならないように、ゼミをサポートしてくれているりかちゃんが調整してくれていたんです。ブレイクアウトルームでいろんな人と話しているから、ゼミの最終回で顔を合わせたときに、「やっと会えたね!」という感じになるんだよね。
A23:めちゃくちゃ緻密に運営してくださっていたんですね。ありがとうございます。
最後の質問です。抽象的な質問で恐縮ですが、もし、さとゆみさんが僕だったら、今後どのようなライターのキャリアを歩みますか?
Q24:今の延長線上で、インタビュー、ブックライティング、講師の3本の柱を立てていくと思います。Webライティングではなくて、取材のほうに軸を置いていくかな。
A24:取材のほうに軸を置くのはなぜですか?
Q25:取材から仕事が広がっていくからです。インタビューには、取材相手のほかに編集者がいます。つまり、ステークホルダーが二人いるんです。その両方から仕事が増えていく可能性があります。編集者さんからの依頼も増えるだろうし、取材相手からも声がかかると思う。ヒロさんの場合、メディアでの執筆だけではなくて、ブックライティングであったり、インナーの執筆もしているから、仕事が広がっていくと思う。
でも、そんなふうに仕事を広げていくと、ヒロさん一人では受け切れなくなるときがくる。だから、生徒さんたちと組織を作って、チームとして仕事を受けていくようにしたらいいんじゃないかな。ヒロさんは自分のコミュニティがあるから、その中で「この人なら書けそうだし、任せられそうだな」という人を見つけて、育てておく。ヒロさんがインタビューして、原稿はその人に任せるというようなやり方をしていけばいいと思う。原稿のクオリティはヒロさんが責任を持って、クレジットは自分の名前と生徒さんの名前を出してあげる。そんなやり方をしていったら、普通のライターさんの5、6倍の仕事が受けられるんじゃないかな。私だったら、そうスケールしていくと思います。
A25:ありがとうございます。すごく参考になりました。「取材にはステークホルダーが2人いる」「取材相手のインナーの仕事を巻き取る」という発想が全くありませんでした。人と会わない生活をしすぎてしまったせいかもしれません。
Q26:ヒロさんは、人と会うようになったらすぐにスケールすると思います。ヒロさんにとっては一番ハードルが高そうだけれど。
ヒロさんはどこまでもストイックに仕事をしてしまう気がするので、とにかく身体には気を付けてほしいです。ヒロさんのような、原稿がよく書けて、仕事の広げ方のセンスが良いライターさんが潰れてしまう原因は一つしかなくて、「仕事を受けすぎる」ということなんです。仕事を受けすぎて、締切を飛ばして、罪悪感に苛まれて、病んでしまうというケースが一番多い。だから、そこだけは気をつけてほしいです。
一気にスケールさせずに、ゆっくりでいいと思う。仕事が増えてきそうだと感じたら、先にメンバーを育てて、割り振りできる体制を作ってから、仕事を取りに行く。この順番で考えるといいと思います。
A26:めちゃくちゃ参考になりました。ありがとうございます。
昨年くらいから、「人と会う」という目標を立てているんです。37歳にして、ようやく人と会う楽しさがわかったので、今年はいろんな人に会いに行こうと思っています。
Q27:いいことです。人と会わずにここまで広げられたのも本当にすごいと思う。人と会い始めたら、もっと広がっていくんじゃないのかな。
でも、最初から飛ばしすぎないようにね。1ヶ月に3人と会うとか、10日に1回は誰かと会うとか、決めてみるといいと思います。私は、1週間のうち1日は未来のために使うようにしているんです。誰かと遊んだり、新しい場所に行ったり。そんなふうにしてみるのもいいと思う。
A27:週に1日は未来のために使う。すごく良いですね。やってみようと思います。
今日はたくさんのお話を聞かせていただき、ありがとうございました。
ぜひ、『CORECOLOR』で一緒に記事を書かせてください。
今後とも、どうぞよろしくお願いします。
(構成・文/玄川 阿紀)
プロフィール
中村昌弘
ライター。2016年に独立以降、ビジネス系のメディアや書籍の編集・執筆をおこなう。Webメディアは「三井不動産リアルティ」「朝日新聞デジタル」「幻冬舎ゴールドオンライン」など。書籍はKADOKAWAの商業出版の執筆や編集協力。Kindleも編集者として30冊以上を手掛けてきた。
X:@freelance_naka(https://twitter.com/freelance_naka)
note:https://note.com/root33