時間をかけて課題に赤字を入れてくださったさとゆみさんに感謝しています
さとゆみビジネスライティングゼミ3期を受講された、「まゐふぁぼ」こと鈴木まゐさん。まゐふぁぼさんは、ご家族の転勤をきっかけにお仕事を退職され、フリーランスのライターとして活動をスタートしました。ゼミの思い出や今後の展望などをさとゆみがインタビューしました。
Q1:自己紹介をお願いします。
A1:まゐふぁぼと申します。
千葉県出身です。今年の1月まで都内の商社で総務の仕事をしていました。夫の転勤の都合で退職し、現在は愛知県でフリーランスのライターをしています。
Q2:まゐふぁぼは、どんな理由でゼミを受けにきてくれたんですか?
A2:大きなきっかけは夫の転勤です。愛知県に引っ越すにあたって仕事を辞めなくてはいけない状況になり、これを機にフリーランスになろうと思い立ちました。これまでずっと会社員として働いてきましたが、元々フリーランスの働き方に興味があったんです。
フリーランスでできるお仕事を探していたとき、夫がさとゆみさんの『書く仕事がしたい』を紹介してくれました。夫は本が大好きで、家には背丈の2倍ぐらいの本棚にバーッと本が並んでいます。まるで図書館のような本の量で、引っ越しが大変でした(笑)。夫は、私が文章を書くことが好きだと知っていて、書く仕事に関する本を探してくれていたようなんです。
『書く仕事がしたい』を読んで、ライターの仕事を「楽しそう! やってみたい!」と思いました。ライターの仕事自体も面白そうだと感じましたが、これまでの自分の経験を活かせるところに魅力を感じたんです。私はいろんなことに興味を持ちやすくて、趣味がたくさんあります。趣味だけでなく、様々な業界で働いてきた経験も活かせる職業だなと思いました。
Q3:今回ゼミを受けてもらって、どんなことを感じましたか?
A3:私は、ライターの「ラ」の字もわからない状態でゼミに飛びこみました。素人中の素人だったので、最初はとてもしんどかったです。書きたいことがうまくまとまらなかったり、自分が想像していたように書けなかったりして、「書くことってなんだろう」とぐるぐる考え込んでしまいました。脳みそにずっと何かが住み着いているような感じがして、3日くらい徹夜してしまったこともあります(笑)。でも、回数を重ねていくうちに、少しずつ書けるようになり、どんどん楽しくなっていきました。
ゼミで気づいたのは、私は書くことよりも企画を立てるほうが楽しんでやれているなということです。もちろん、書くこともやりたいことではあります。でも、雑誌やWeb媒体、書籍の企画を立てる課題が本当に楽しかったんです。例えば、雑誌の企画だと、想定読者を考えて、その人たちにどんなことを伝えたら響くのか考えたり、コンテを描いたりするのもとても面白かったです。コンテはどこに何を配置するか、誌面上でストーリーを考えてレイアウトしていくのがすごくワクワクしました。
Q4:読み手から書き手に変わってみて、どうでしたか?
A4:書き手になってみて一番難しいなと思ったのは、誰かを傷つける表現がないかチェックする「小骨を抜くこと」です。読み手として読んでいるときは、すらすら読んでいて、これといって気になることはありませんでした。でも、自分が書き手として書いてみると、全然小骨が抜けなくって。意識していても、小骨がポロポロ出てきしまいました。
世の中に出ている文章は、ライターさんや編集者さんといった様々な方の視点が入って、念入りにチェックされている。そういった作業を経た文章をこれまで読んできたんだなと、自分が書き手になって初めて気がつきました。
Q5:一度でも自分で書いてみると、その先読む文章に対する目線も変わると思います。
ゼミを受けて、良かったことはありますか?
A5:最初に「書くことってなんだろう」と考えていた時期は、吐きそうになっていたこともありました。でも、自分がどんなことを考えているのか、思考を脳みそから取り出して、メモに書き出すようになってからは、だんだん楽になっていったんです。
私は講義の内容を全部文字に起こしてWordにまとめていました。Facebookのグループページにさとゆみさんがつけたコメントも、自分宛じゃないものも全部まとめて、一覧を作っていたんです。まとめているときに、講義中によくわからなくて消化不良になっていたことがわかるようになったり、聞いていたようで聞いていなかったことに気づいたり、 頭が整理されて、すごく楽になりました。
私は、声に出して自問自答しながら思考を整理するクセがあるんです。「頭の中で考えていることを外に出すと楽になる」ことは、ゼミを受けている間に気づいたことなので、知れてよかったなと思います。
Q6:思考を頭の中に置いておかないで、アウトプットして、キャパシティを確保しておくという方法ですね。ライターの仕事だけでなく、生きていくうえでこの先も役に立ちそうです。
アドバイスや赤字で、印象に残っていることはありますか?
A6:「人は自分が気づいたことしか気づけない」というさとゆみさんの言葉が一番刺さっています。他の講座を受けたことがないのでわかりませんが、他の人の課題と講評が見られる講座はあまりないのではないかなと思うんです。自分の課題への赤字はもちろんですが、他の方の赤字を読んで「ふむふむ」と学ぶこともたくさんありました。でも、次の課題で私も同じ赤字をもらうことがあって、やっぱり「人は自分が気づいたことしか気づけない」のだなと実感しました。
ゼミを受けていて一番ありがたいなと思ったのは、赤字をもらえることです。ライターの仕事について調べているときに、「赤字を入れてくれる媒体は少ない」という情報は聞いていました。実際に、ゼミで何年もライターをしている方から「赤字を入れられずに、書いた原稿がそのままポンと世に出されてしまうことのほうが多い」という話を聞いて、すごく怖いなと思いました。だからこそ、ゼミで赤字をもらえることが本当にありがたかったです。さとゆみさんが時間をかけて私の文章を見てくださって、赤字を入れてくださる。本当にありがたいことをしていただいているなと感じました。これから先、赤字がもらえない仕事もあるかもしれないし、どんなことに気をつけて文章を書けばいいのか学べたことはすごくプラスになりました。さとゆみさんに赤字をいただけてとても感謝しています。
Q7:今、私の自己肯定感が爆上がりしました。そう言ってくれてありがとう。
「前回の講評で他の人が指摘されていたのを聞いていたはずなのに、やっぱり自分もやってしまう」というのは、みんなよく言っていましたよね。私も今でもよくやります。編集者さんから、いつも私がみんなに入れているような赤字をもらって、そこでまた「気をつけよう」と意識するんです。赤字をもらって、気づいて、また意識して……というサイクルは、これから先もずっと続いていくことだと思います。
「赤字を入れられたことがない」という話はよく聞きますが、私が普段仲良くしているライターさんからは、「赤字を入れられたことがない」という話をあまり聞いたことがないんです。だから、赤字が入る媒体で書くことが大事かなと思います。
赤字が入る媒体とは、予算がある仕事です。つまり、赤字を入れる人がいる、編集者がついている媒体は、しっかり予算が組まれているんです。一本あたりの記事制作費に、ライターさんの原稿料だけでなく、原稿を確認する人のお金も入っている。きちんとチェックした原稿を世の中に出しているメディアは、信頼のある媒体だと思います。そういった媒体で書いていると、規定の値段の原稿料がいただける。人の手が入っている場所で書くことが、大事だと思います。
A7:私、最初は「この一年間はしっかりライターの勉強をしよう」と思っていたんです。でも、ずっと家にいるのが性に合わないとわかって、持ち前のオタク気質を発揮しながら、いろいろと求人を探し始めました。赤字がもらえる媒体のお仕事を探したのですが、なかなか「未経験ウェルカム!」な求人が見つからなくって……。2件応募しましたが、一つは「未経験者はちょっと」と落とされてしまいました。月に5~10件くらいは媒体に応募していって、どこかで当たればいいなと思っています。
Q8:「未経験ウェルカム!」な媒体は少ないかもしれません。でも、まゐふぁぼの心構えがとてもいいなと思いました。「ここしかない!」と決め打ちで応募するより、いろいろと探してみて、「どこかで当たればいいな」と気楽に応募していったほうが、あまり追い詰められませんから。
それに、ゼミからあまり間を空けずに動き出しているのもいいですね。忘れないうちに、ちょっとずつでもやっていったほうがいい。いろいろ探して、いいお仕事が見つかるといいね。
まゐふぁぼは、ゆくゆくはどんな感じになりたいんですか?
A8:今は目先のお仕事を探すことに夢中になってしまっていて、将来どうなっていたいかは、まだあまり考えられていない状況です。
でも、家に閉じこもってずっとパソコンをカタカタしているのは合わなそうだなと漠然と思っています。外に出て行くお仕事のほうが、身体にエネルギーが帯電しなくていいんじゃないかなと。
今、もう一つ応募しているお仕事が取材に同行するライターで、これから応募してみようかなと考えているお仕事がお祭りなどのイベントに行って取材するライターです。どんな働き方が合っているのかは、この一年で探っていけたらいいなと思っています。将来的なことは、ちょっとふわふわしているのですが。
Q9:なるべく外に出ないで家で仕事ができるほうがいいという人もいれば、人と会って仕事がしたい人もいるので、まゐふぁぼのタイプ次第かなと思います。
電気を帯びる感じ、私もすごくわかる。内側に熱がこもると、ちょっと体調が悪くなってしまうときがあって。「アーシングしに行かなきゃ!」とよく思います。取材は放電している感じがするな。
A9:以前、同期のあおもんさんに算命学を見ていただいたんです。算命学には「エネルギー数」という「その人の活動量を表す数値」があると教えてくれました。150くらいが平均で、お家でじっくり作業することに向いている人は100くらいの数値なんだそうです。でも、私はその数値が293もあって(笑)。平均の約2倍のエネルギー数があったんです。あおもんさんに算命学を見てもらって、とても腑に落ちました。ゼミの受講中は課題をやったり復習をしたりで家にいることが多かったのですが、途中で耐えきれなくなって、友達と出かける予定をいろいろと詰め込んでいたんです。まさに帯電していました。
Q10:自分の性質を知ることは、フリーランスで働くにあたってすごく大事です。自分がどこに居心地の悪さを感じているのか、どこを優先していったほうがいいのかわかる。仕事選ぶときに軸ができていいと思います。
まゐふぁぼは、一つ気になることがあると、しっかりのめり込んでいろんなことを調べるタイプだなと感じました。講義の内容やコメントをまとめたりするのも、とてもナチュラルにやっている。興味が出たことは突き詰めてやる人なんだなと思いました。推し活もしっかりハマってやっているし。
A10:しっかりハマっています。興味をもったことは、一度ズボッと調べないと気が済まなくて。K-POPは10年以上追いかけています。
今回、ゼミが始まる前に「どんな人が来るんだろう」とめちゃくちゃ粘着質に調べました。趣味で使っているTwitterの鍵アカウントでゼミ生をフォローして、日頃どんな発信をしているかチェックしたり、インターネットでワードを変えながらゼミ生のことをいろいろ検索したりしていました。「このワードでヒットしないってことは、この言葉ならどうだろう? きた! 見つけた!」って(笑)。ゼミ生が手がけている本を読んだりもしました。ちょっと、怪しい人だと思われたらイヤなんですが……。ナチュラルにやってしまってすみません(笑)。
Q11:粘着質なところ、すごくいいと思います。
私、過去にすごく面白いインタビューを受けたことがあって。インタビュアーさんは元々講座生だったんだけど、仕事で私にインタビューの依頼をしてくれたんです。私は自分がインタビューするのではなく、誰かにインタビューされることもすごく多いんだけど、その人がしてくれた質問は、過去に一度も聞かれたことのない質問ばかりで、すごく面白かった。「その情報、どこから拾ってきたんだろう?」と思うような質問がたくさんありました。
だから、普段どんなリサーチをしているのか聞いてみたんです。すると、「取材相手の方の勤め先がわかる場合は、Googleのストリートビューで最寄り駅から会社までのルートをチェックしたりします。プロフィールがわかれば、その人が通った幼稚園もストリートビューで見てみますね」とおっしゃっていました。それを聞いて、なるほどと思って。そういうところまで調べないと、絶対に出てこない質問だったんです。
今までに聞かれたことのない質問をされるのって、すごく楽しい。よく取材を受ける人は、50回、いや100回くらいは、繰り返し同じ質問をされているから、違う質問をしてもらえるとすごく楽しいと思う。
著者さんや社長さんといった、よく講演をする方は、講演の最後の質疑応答の部分だけ録音している人がすごく多いそうなんです。講演で話す内容は、その都度多少アレンジするとしても、基本は同じであることが多い。でも、質問のときは、初めて思考することを聞かれる可能性がある。質問を録音しておいて、次の書籍のネタに使う人もいらっしゃるそうなんです。
だから、質問はプレゼントだと思います。良い問いはギフトになる。私がライターとして取材をするときは、そんな質問ができるといいなと考えています。
A11:はあ、すごい。「質問はプレゼント」。また名言が出たなとメモしちゃいました。
ゼミのさとゆみさんへのインタビュー課題のとき、さとゆみさんの本やnoteにも全部目を通していたんです。できることは全部調べて、調べた内容をまとめたメモを脇に置いてインタビューに臨みました。でも、いざインタビューが始まったら、全部飛んじゃったんです。メモを確認することもできませんでした。文字起こしをしているときに、「この話、本を読んで知っていたのに!」と思うことがたくさんあって、下調べとは別に取材力をつけなくちゃいけないなと感じました。
Q12:インタビューの間、まゐふぁぼは時々固まっていました(笑)。それはそれですごくいい経験をしたと思います。
でも、調べたことと、聞きたいことは別の話。聞くことを決めるために調べるんです。それに、どんなに調べて予想を立てたとしても、取材相手はこちらが思ったようには答えてくれません。思ったように答えてくれなかったときに、ちゃんとその人が何を言っているのかよく聞いて、それに乗っかることが大事だと思います。
聞きたいことはあってしかるべきだけれど、そこに固執すると、ダイヤモンドの宝のような話をポロッと聞き逃してしまいます。ライターさんが次の質問を考えているときって、取材相手はわかるものなんです。もちろん、ライターさんは次の質問を考えながら話を聞いているのだけど、次の質問を考えるためにものすごく脳みそを使っていると、話を集中して聞くことができない。しかも、取材相手にそれが伝わってしまう。話を聞きながら質問を考えられるようになるには、訓練するしかありません。
A12:インタビュー課題のとき、私が考えていたことと、さとゆみさんの回答は全然違いました。事前に5つくらい質問を用意していたのですが、話の流れ的にそれらの質問はできなくなってしまって。それで、自分の身の上話をしたり、妹や友達の話をさとゆみさんに相談したりする形で展開しようと切り替えたんです。取材が終わったあと、さとゆみさんに「私のインタビュー、つたなかったと思いますが、どこかいいところはありましたか?」と質問させていただきました。さとゆみさんは、「自分の経験を交えながら相談する感じで質問していくのはいいと思った」とおっしゃってくださったんです。状況に応じて、質問の仕方を変えたり、乗っかったりしていくのが大事なのかなと思いました。
Q13:取材に慣れているインタビューイーさんは、個人的な相談で出てくるような質問くらいしか、新しい質問がないんです。質問に困ったら、自分や友達の相談事をするのは、ライターさんが持っているテクニックの一つ。身の上相談は、事前にきちんと調べているからこそできる質問だと思います。下調べはすごく大事なんだけど、それでわかったつもりになっている原稿が一番つまらない。個別の相談のような形で具体的な話を聞き出していくのはとても良い方法だと思う。
普段から、誰かと会っているときに質問の練習をやってみるといいんじゃないでしょうか。例えば、この先、まゐふぁぼが取材の同行をすることになったとします。そうすると、取材相手だけじゃなくて、まゐふぁぼに仕事を依頼してくれた人とも顔を合わせることになる。その人に、インタビューのつもりでいろんな話を聞いてみるんです。
出会った人にいろいろ聞いていく練習をすると、ナチュラルに質問できるようになっていくと思います。友達でもいいし、知り合って間もない友達でもいい。友達同士で話しているときは、自分の話をすることもある。自分の話を1割、相手の話を9割くらいにすると、良い練習になると思う。1:9になったからといって、上手く質問していたら「私ばっかり話しすぎちゃった」と相手に申し訳がられることはないから。
今日、ほかに何か話そうと思っていたことはありますか?
A13:私、ゼミを受ける前までは、なかなか自分の書いた文章を手放すことができなかったんです。「この文章でいいのかな」と踏ん切りがつかなくて。だから、さとゆみさんの本を読んでライターになると決めたけど、「大丈夫かな、私にできるのかな」と漠然とした不安がありました。
でも、いざゼミが始まって、締切を決められたら、全部遅れることなく提出できたんです。これまで手放せなかったのは、締切がなかったからだと思いました。もうちょっと上手く書けるんじゃないのかなと、いつまでも推敲してしまっていたんです。でも、普段からさとゆみさんがおっしゃっているように、100%納得した文章を書いて世に出せることは、ほぼないんだなと気づきました。他の人から締切を与えられるから、手放せる。自分ではなく「他の人から」というのが、私にとってとても重要でした。
私は原稿を手放す勇気がなかったので、ゼミの課題で毎回それができたことが自信になりました。今は、ちょっと寂しく思いながらもバイバイと手放すことができます。
Q14:まさにそうです。締切がないと永遠に直しちゃうんですよね。
良い原稿を書きたい気持ちはあるんだけど、例えば今日の朝9時が締切だとしたら、「8時59分までに書けた良い原稿」が諦めポイントになる。原稿を書くことは、可能性をどんどん減らしていくこと。諦めることの連続なんです。
取材で聞いたことが全部、原稿に入り切るわけではない。だから、必ず捨てなければならないエピソードが出てきます。こっちを立てるために、こっちを捨てると決めなくてはいけない場合もある。一部分の良いエピソードだけを取り出すと、これを入れたほうがいいんじゃないかと思うけど、全体の原稿の流れを見たら、入れないほうが良いこともある。それが正解かどうかはわからないのだけど、でも、やっぱり、本当に諦めて手放すのが、締切だと思います。
A14:あと、もう一つお話ししようと思っていたことがあります。
もし、私と同じように「未経験でも書く仕事がしたい」と思っている方がこのTwitterライブを聞いていたら、ぜひ「書く仕事を始めました!」と周囲に宣言してもらいたいです。さとゆみさんの本にも書いてあったと思います。
私もずっといろんな人に言いふらしています。その結果、二人のゼミ生から文字起こしのお仕事をいただきました。ゼミの最終回のとき、「文字起こしの仕事がしたいです」とみんなに話していたんです。それを覚えてくれていたみたいで、「まゐふぁぼちゃん、文字起こしやりたいって言っていたけど、やってみない?」とご連絡をいただきました。
Q15:素晴らしいです。
これからライターを目指す人は、テープ起こしのバイトをするといいと思います。
ライターには徒弟制度がありません。ライターは師匠を持ちにくいし、弟子を育てにくいなと思います。カメラマンさんだと、アシスタントとして現場に行って、撮影風景を見ながら、どんな角度からどんなタイミングでシャッターを切っているか学べます。でも、ライターはアシスタントとして取材現場についていくことは基本的にはありません。それに、ヘアメイクさんのアシスタントのように、24時間密着して、仕事をしている姿を見て覚えるようなことも、ライターだとできないなと思います。ライターの場合、一番大事な技術が脳内で完結しているんです。師匠がパソコンを打っている横で座って眺めていたって仕方ないんですよ(笑)。
だから、プロの脳内を少しでも覗くためにはどうしたらいいのかというと、テープ起こしなんです。テープ起こしをしたあとに、同じ条件で自分も原稿を書いてみるといいと思います。文字数や締切を聞いて、自分も同じ条件で書いてみる。それで、ライターさんが書いた原稿と答え合わせをするといい。ライターさんの原稿が唯一無二の正解ではないけれど、例えばその原稿がメディアに掲載されるなら、少なくともメディアの編集長とインタビュー相手はOKを出しているということ。自分の原稿と比べてみたら、すごく勉強になると思う。
まゐふぁぼは、いろんなことを素直にコツコツやっていって、素晴らしいなと思いました。
A15:挑戦することには比較的抵抗がないので、どんどんやっていこうと思っています。わりと腰も軽いほうなので(笑)。
Q16:そうだよね、腰軽いよね(笑)。
さっき、イベントの取材をしてみたいと言っていたけれど、それを楽しそうだと思えるフットワークの軽さがいいなと思う。編集者さんの間で、「まゐふぁぼだったら、『行きたいです!』って来てくれそうだよね」と一度でも評判が立てば、いろんな人から重宝されるようになりそうです。
A16:さとゆみさんも、たくさん出張に行かれているイメージがあるので、フットワークが軽いほうですよね? イベントの取材などは今はあまり行っていないんでしょうか?
Q17:若い頃は、5日間で渋谷109の全店舗を取材したり、ラフォーレの交差点の前で100人キャッチして撮影したりしていました。でも、今の私がそれをやったら、しばらく使いものにならなくなってしまうと思います。根性はあるんだけど、体力がないんです。
ベテランのライターさんになればなるほど、体力的な問題で大勢の人に会って話を聞くような取材ができなくなっていくと思います。私も『道を継ぐ』では190人くらいの人にインタビューしたけれど、今だったらちょっと難しいかもしれない。だから、それができるというのは、すごく強いタグになると思う。
A17:もしかしたら、私もいつかしんどいと思うときが来るのかもしれません。今は外に出て行くことにアンテナがビビっときている感じがします。私は人と会って、みんなで何かをすることが好きなんです。だからイベントの取材に惹かれるのかも。
Q18:人と会うことに抵抗がなくて、楽しめるのはとてもいいことだと思う。ライターさんは意外と人見知りが多くて、インタビュー前は憂鬱という方も結構います。
まゐふぁぼの好きなことは、意外と他のライターさんがやりたくない仕事である可能性が高い。だから、そこをアピールしていくといいかもしれません。「現場の取材が大好きです」「人が多いところに行って、たくさんの人に話を聞くの好きです」ということは、ものすごく強みになる。私も、今日のインタビューでかなりまゐふぁぼのことがインプットされた。何十人もの人に取材をしなきゃいけないとき、まゐふぁぼの顔を思い出そうと思いました。
他に、話したかったことはありますか?
A18:さとゆみゼミを受けるかどうか迷っている人にメッセージを伝えさせてください。
ゼミでは、フラットに原稿を読んでくれる仲間と出会えます。褒めすぎることなく、けなしすぎることなく、互いの文章をフラットに読み合う関係を築くことができるんです。自分の文章が周囲からどう見えるのか、どんな性質を持っているのか、聞いてみたらみんな喜んで答えてくれると思います。良い文章を書くために切磋琢磨できる仲間と出会えるので、ぜひ、さとゆみゼミに勇気を出して飛びこんできてもらえたらと思います!
(構成・文/玄川 阿紀)
プロフィール
鈴木まゐ
1991年生まれ。千葉県出身千葉県育ち、愛知県在住。大学卒業後、ギフト・リカーの売場長、学習塾の事務、中小企業の総務(主に教育・SDGs推進)を経験。夫の転勤を機にフリーランスのライターへ転身。イベントや現場が好きでフットワークの軽さが持ち味。キャリアデザイン・SDGs・アイドル・漫画・芝居・手土産・のど飴に関心がある。