「フリーランスとして生きる」と心が決まった。食分野の仕事を広げていきたいです。

さとゆみビジネスライティングゼミ3期を受講された、「炭ちゃん」こと炭田友望さん。炭田さんは広告制作会社で長年コピーライターとして活躍し、独立した現在は食に関する様々なライティングを行っています。ゼミでの思い出やお仕事について、さとゆみがインタビューしました。


Q1:ライターのお仕事はどうやってスタートされたのですか?

A1:新卒のときに、コピーライターとして広告制作会社に入社しました。担当していたのは車の広告です。軽自動車やワゴン車、スポーツカーなど、様々な車種のコピーを書いていました。「あの頂きへ」のような、めちゃくちゃ格好いいコピーです。車の広告は頂きを登りがちなんです(笑)。

車というと、趣味で購入する方もいらっしゃいますが、田舎や山の中に住んでいて、どうしても生活に必要で購入する方が大半です。生活のために車を購入するご家族の場合、ご主人は乗り気で、奥さんは「どうしてこんなに高いマフラーなんかつけるの?」と消極的なこともよくあります。私は、そういったお客様にアプローチするためのコピーをよく書いていました。実は私も車に興味が薄い方だったんです。なので、同じように感じている方の気持ちを考えながら、飾りだけに見えるマフラーの羽がどう役に立つかなど、車のことがわからないなりに工夫してコピーを書いていました。

Q2:今は食に関するライティングをしていると聞きました。食のお仕事をするきっかけは何だったのですか?

A2:車のPR誌は、当時は趣味性の高い男性向けのものしかなかったので、女性向けの冊子を作ろうと提案したんです。無事に企画が通って、編集長的な立ち位置で12ページくらいの冊子を作ることになりました。

料理を紹介すると、車の広告が載っていてもレシピ見たさに自宅へ持ち帰ってくださるんです。料理研究家の方にレシピ作成をお願いして、調理して、撮影して、コピーを書いて、ディレクションをして……とあれこれやっているうちに、車より料理について伝えるほうが面白くなってしまって。車に関してはわからないことだらけだったけど、料理については「わかる!」と思えました。撮影現場で実際にお料理を見て、試食もできるので、料理研究家さんのおっしゃっていることもすんなり理解できたんです。「わかる」ことを書くって、こんなにストレスがないのかと驚きました。それに、わかるからこそ、+αで伝えたい情報が生まれて、「もっとこうしたい!」と積極的に提案できるようになりました。

そのとき、私は自分がターゲット層に入らないと、上手く書けないタイプなんだと気づいたんです。今後は料理関係でお仕事をしていこうと、12年勤めた会社を退職することにしました。

Q3:退職されてからは、どうやって食のお仕事を広げていったんですか?

A3:食をメインで取り扱っている会社に転職したのですが、残念ながら、家族の都合で退職することになり、1年以上キャリアにブランクが空いてしまいました。「や、やばっ! 何もない人が爆誕してしまった!」と不安に思っているところに、いいご縁があって、お菓子専門シェアキッチンの運営に携わるようになりました。

私の勤めているシェアキッチンは、主にお店を出したい事業者さんにご利用いただいています。開業にはお金がかかるので、店舗を持つために借金をしている方も多いです。でも、シェアキッチンを時間貸しで利用すれば、気軽に自分のお店を始めることができるんです。

代表の方は別にいて、私はマネージャーをやっています。そこで、シェアキッチンを利用してくださっているメンバーさんのご紹介記事を書いたり、クラウドファンディングのプロジェクト文を書いたり、お菓子のWebメディアを新しく作ったので、インタビュー記事を書いたりしています。シェアキッチン関連の仕事だけでも、意外と書く仕事がたくさんありました。

Q4:私もクラウドファンディング用の文章を書いたことがあります。資金が集まるかどうかは、ライターさんの力量によって大きく変わるのではないかなと思いました。炭ちゃんは、クラウドファンディングの文章はどんなことを大事にして書いていますか?

A4:「偉そうに見えないこと」を特に意識して書いています。クラウドファンディングは、ともすれば「私たち、すごいことをやっています!」とふんぞり返ったような印象を持たれてしまう可能性があるので、地に足のついた、信頼感の出る文章を書こうと気をつけています。

私が携わったのは、新しいシェアキッチンをオープンするための資金を集めるプロジェクトでした。リターンは安価なものから高価なものまで様々で、高いと「シェアキッチン1年分の利用料38万円分」というリターンがありました。購入するには勇気のいる金額だと思います。だから、シェアキッチンで実際に活動しているパティシエの方たちにインタビューをしたんです。プロジェクトを推進している運営側の言葉ではなく、活動中のメンバーさんたちの普段の様子や、どんな想いでシェアキッチンを使いはじめたのかなどを紹介しました。

メンバーの思いや背景を知ってもらうことで、「この人たちと一緒にシェアキッチンで活動したいな。支援しても大丈夫そうだな」と感じてくださる方が増えると思うんです。「いい人たち」というと恥ずかしいのですが、「私たちはあなたからお金を搾取しようとしている者共ではありませんよ」というマインドで文章を書いていました。

Q5:なるほど。とても参考になります。ありがとう。炭ちゃんはライティング歴が長いのに、どうして私のゼミを受けてくれたのですか?

A5:今思うととても恥ずかしいのですが、実は「私の文章、めっちゃ上手い!」と思いながら生きてきました(笑)。けれど、いざフリーランスになったら、自分にライティングの仕事を依頼してくれそうな人ってこの世に3人くらいしかいないと気づいてしまったんです。

今までは会社に勤めていたから営業せずとも書く仕事ができたけれど、フリーランスとして書いていくとなったら、自分が上手いと思っているだけでは意味がない。会社員に戻るか、このままフリーランスを続けるかすごく悩みました。

そんなときに、さとゆみさんの『書く仕事がしたい』を読んで、講座を受けてみたいなと思いました。さとゆみさんの講座なら、企画の立て方や営業の方法も教えてもらえるし、実践的なことが学べそう。コピーライターとして文章を書いてきた私にとっては、1から文章を習うより、実地訓練がしたいという気持ちがありました。

Q6:ゼミを受けてみて、どうでしたか?

A6:文章のルールを知れたことがとてもよかったです。『「という」を乱発しない』、『inside の意味のない「中で」は使わない』、『but の意味のない「が」は使わない』などのルールです。

コピーライターをしていたくせに、文章のルールを習ったことがありませんでした。ルールを知らずにどうやって書いてきたかというと、原稿を音読していたんです。音読すると、一文は長くならないしねじれない。それだけでサバイブしてきました。でも、さとゆみさんのゼミを受けて、音読しただけでは直せない様々なルールがあるのだと知りました。

むずかしかったのは、最終課題の自著の企画書を立てること。広告の仕事が長かったので、難儀しました。広告は「相手があって何かを書く」仕事なので、「自分の考えを書く」ことを想像したことがなかったんです。私は夫をテーマにしたエッセイの企画を提出しました。大変でしたが、チャレンジできて面白かったです。

Q7:ゼミで学んだことは、今後の仕事に役立ちそうですか?

A7:実際に仕事で活かしていくのはまだまだこれからですが、ゼミを受けて心持ちが変わりました。ここ一年くらい、会社員に戻るか、フリーランスを続けるかずっと悩んでいたんです。でも、ゼミを通して、会社員だけではない生き方に触れられて、フリーランスとして生きていこうと気持ちが固まりました。

さとゆみさんへのインタビュー課題のとき、「フリーランスと会社員の違い」をうかがいました。さとゆみさんは「会社員は長期的な目線が必要」だと話してくださったと思います。「会社員の場合、『なんだコイツ!』と思っても、ケンカせずにぐっとこらえなきゃいけないシーンが多い。なぜなら、その人は半年後も一緒に仕事をする可能性があるから、カッとならずに長期的な目線を持って仕事をする必要がありますよね」というお話をお聞きしました。

でも、私の会社員人生を振り返ってみると、お恥ずかしながら、私は政(まつりごと)が全くできていませんでした。ただありのままに楽しく生きていたんです。さとゆみさんのお話を聞いて、会社に戻っても上手くできそうにないな、フリーランスのほうが水に合っているなと気づくことができました。

これからは、さとゆみゼミで学んだことをどんどん仕事で実践していきたいです。もっと食について書ける場所を増やしていけたらいいなと思っているので、いろいろと模索しています。料理関係の仕事をしている方と積極的に交流して、仕事を広げていきたいです。

(と、言っていたら、ゼミの同期やこのスペースを聞いてくれた人たちから、いろんな仕事の話をいただきました。改めて、自分がやりたいことを口に出すのは大事! と思いました)

Q8:炭ちゃんは相場観を掴むことがとても上手いと感じました。何を書いてもポイントを外さないなと。一つの業界のことを長く書いてきた人は、どの業界のことを書いても上手く相場観を掴めるケースが多いなと思います。「これは車の業界でいうところのコレだ!」と置き換えて考えられる。

だから、「食をテーマにした記事じゃなくても、全部上手い」と思います。でも、いろんなジャンルをやっていくと器用貧乏になってしまいやすいという注意点があるなとも思います。何でも上手く書けるからって、何でも書きたいわけじゃない。そういう気持ちはとても大事だと思います。

今後、こんな媒体で書いていきたいという希望はありますか?

A8:有名な雑誌やメディアで書きたいという希望は、今のところありません。書きたいことでいうと、小さなお店を推すような記事を書いていきたいと考えています。私は料理道具の街・かっぱ橋が大好きで、何をせずとも週3で通っているんです。かっぱ橋にある小さなお店を取材して、何か記事が書けたらいいなと思っています。シェアキッチンも様々なお店の方にご利用いただいているので、推し甲斐があります。

先日、「おもしろ乳化マシーン」を使わせてもらう機会がありました。正式には「乳化専用調理器 CLOSER FINE MIX」というカッコイイ名前です。水とチョコレート、トマトジュースとオリーブオイルなど、様々な組み合わせを考えて乳化させるのがとても楽しかったです。

そのあと、noteにそのときのことを3000字くらいにまとめて書いたら、なんとメーカーさんからお仕事をいただくことができました。メーカーさんは、「私たちの商品をわかりやすく紹介してくれてありがとうございます」とすごく喜んでくださって。そのとき、これからはこんなことをしていけばいいのかなと思ったんです。好きなもの、魅力を感じているものについて記事を書いて、メーカーさんの力になれたらいいなと。
(※炭ちゃんが書いたnote:『「おもしろ乳化マシーン」で遊んでみた』

でも、今回お仕事につながったのは、運が良かったのもあるなと思っているんです。メーカーさんが世の中に商品を出していきたいタイミングと上手く合致したから、「ぜひ一緒に仕事をやりましょう」と言っていただけた。こんなラッキーパンチばかりが続くわけではないし、商品を推す記事を書いて、メーカーさんからお仕事をいただくのは難しいのかなとも考えています。ただのファンで終わらずに、きちんとお仕事につながる文章を書くにはどうしたらいいんでしょう……。

Q9:推している商品やサービスをブログやnote等で発信すると仕事につながるという話は、様々な業界でよく聞いています。メーカーの広報さんは目を皿にしてエゴサーチしているそうなので、商品についてしっかり書いている記事があると目に留まりやすいと思います。

以前、私は書籍のレビューをnoteに書いていました。ただのレビューではなく、「書籍に書いてあるメソッドを期限を決めてやって、本当に人生が変わるのか検証してみた」という内容のものでした。
(※さとゆみが書いたnote:『ライターさとゆみの「書アド検」』

文字数は6000~10000字で、10本ほど書きました。どの記事も数万PVあったと思います。多いときは20万PVくらいありました。レビューを書いたほとんどの書籍の編集者さんからご連絡もいただきました。書籍のレビューはたくさんあるけれど、このような切り口のものがなかったから目に留まったのだと思います。このときにご連絡をいただいた編集者さんとは、今一緒にお仕事しています。熱量や面白い切り口があると、「一緒にお仕事してみませんか」と声がかかる可能性はあるなと思います。

A9:私は料理本をめっちゃ買うので、作ってみた系の記事なら書けそうです。

Q10:作ってみた・やってみた系の企画で跳ねている記事はたくさんあるのでいいと思います。試したところに価値があるから、ぜひやってみてください。

フリーランスの働き方はどうですか?

A10:楽天家だからかもしれませんが、フリーランスになって良かったことしかありません。いつ・どこで仕事をするのか自由に決められるのが最高だなと思っています。シェアキッチンは1週間に1、2回くらい出勤することがありますが、LINEやメールでやりとりすることがほとんどなので、家で仕事をすることが多いです。

最近まで会社員根性が染みついていたので「土日祝日は絶対に仕事しないぜ!」と決めていたのですが、「平日に仕事が進まなかった分、土日にちょっとやっておけば、明日の自分が楽になるじゃん!」とやっと気がつきました。

フリーランスなんだから、会社員のようにきっちり9時から18時まで働くと決めなくてもいい。まとめて時間を作らなくても、空いた時間にちょこちょこ手をつけて仕事を進めてもいい。「なんて自由に仕事ができるのだろう!」と感動しました。

会社員時代は、長時間デスクに座っていられず、ホワイトボードに「炭田 資料探し」と書いて、隙あらば外で仕事をしようとしていました。そういえば、子どもの頃、ピアノ教室も座っていられなくてたった3回でやめたんです。すごく嫌で、トイレにずっと立てこもって、「嫌だ! 座っていられない!」と叫んでいました。今もそのときとあまり変わっていないなと思います(笑)。自分の意思で、座って仕事をするか、外に出かけるか決められるのはとても気分がいいです。

それから、これまでの私は、会社員が長かったせいか、出し惜しみしてしまうところがありました。「書くだけ大変」というマインドが染みついてしまっていたんです。先ほどの乳化マシーンのことも、さとゆみゼミbeforeの私だったら「面白い」で終わらせていたと思います。「面白い! すごい! Twitterに投稿しておしまい!」だったんですけど、ゼミのおかげで書くことが日常的になったこともあって、出し惜しみせずにあの記事を書くことができました。

Q11:毎月決まった額のお給料が入らないことは気になりませんか?

A11:炭田家はお小遣い制なので、あまり気になりません。夫はお金の管理が大好きなんです。夫には「君がいくら稼いでも、お小遣いはびた一文も変わらない」と言われています。そう言われたら、もう好きなことをしようと逆に吹っ切れました(笑)。

とはいえ、万が一のときに備えて自立できるようにしたいので、稼がないという選択肢はありません。でも、夫にそう言われて気持ちがラクになった部分はあります。お金のために無理してあまり興味の持てない仕事をせず、好きな仕事だけやっていいんだというのはありがたいです。

でも、「好きなことだけしていたい」と言葉にしてみると、ちょっと恥ずかしいというか……。最近は20歳くらいの子でも言わないのに(笑)。

Q12:いいと思います。お金を稼ぐことは大事だと思うけれど、書くことによって自分が豊かにならないとあまり意味がないなと私は思っています。

今は20歳の人よりも、40歳の人のほうが「好きなことをしたい」と言っているような感じがします。20歳頃だとこれから先のことを考えて、現実的な選択をする。でも、40代、50代くらいになると、「今まで十分やってきたし、もう好きなことだけでやってもいいんじゃないの?」と思うようになってくる。残り時間を考えるから。私の周りにはそういう方が多いような気がします。

ゼミが終わって、最近は何にハマっているんですか?

A12:シフォンケーキ作りです。通っているお菓子教室の先生が「シフォンケーキは100台作ってからがスタート」とおっしゃっているので、100台作ることを目標にしています。100台作る過程をInstagrmで発信しているんです。いつか、シフォンケーキの本を出せたらいいなと思っています。

Q13:TwitterなどのSNSで注目されて、レシピ本が発売されるというケースはよくあります。料理研究家のリュウジさんも、もともとはYouTubeやTwitterで発信されていましたし、エッセイスト・料理家の寿木けいさんはTwitterに投稿していた「きょうの140字ごはん」が話題になって書籍化されました。SNSで編集者さんの目に留まる可能性はあると思います。

アメブロやnoteで著者を探している出版社はたくさんあります。でも、実用系の書き手はアメブロかな。何週間かカテゴリ1位が続くと出版社から連絡が来ると、もっぱらの噂です。

ちょっと話が変わっちゃうけれど、「著者はnoteで探すけど、ライターはnoteで探さない」と編集者さんから聞いたことがあります。ライターは人の紹介や公募で見つけているのだそうです。私も毎週のように編集者さんにライターさんを紹介しています。noteに文章をあげているライターさんはたくさんいらっしゃるけれど、取材ができるかどうか、フォーマットに沿う原稿が書けるかどうかといった力量は、noteに書かれているような日記だと見えにくいんです。文章を書く習慣をつけたり、キレイな文章を書く練習をしたり、個人の訓練のためにnoteを使うのはとても良いなと思いますが、営業ツールにはならないことが多いと感じています。

一方で、自分が著者として発信したい場合は、noteでコンテンツを書きためていくのは有効な手段だと思います。著者やエッセイストには、誰かを取材して書いた原稿ではなく、その人自身が書いた原稿が求められているからです。編集者さんがnoteを読んで「この人はコンテンツを持っている」「オリジナリティがあるな」と思った場合には、声がかかるケースがあると思います。

炭ちゃんがやりたいのは、どっち方向なんだろう。

A13:今のお話をお聞きして、私がシフォンケーキのレシピを持っているわけではないから、他に切り口を考えたり、誰かと組んだり、何か別の方向を考えなければならないと頭の中がクリアになりました。自分が著者になるのか、ライターとして書くのか、その境目が曖昧だったと感じます。

Q14:たしかに、先生のシフォンケーキのレシピをライターとしてまとめたいのか、それとも自分自身がレシピを作りたいのかによって、戦略が変わりそうですね。

A14:以前、さとゆみさんに「『女の運命は髪で変わる』に『昇進できない女性はキューティクルが剥がれているんです』のようなことが書いてあって、『ここまで言い切るの!?』と驚きました」という話をさせていただいたことがありましたよね。それに対して、さとゆみさんが「美容にはスキンケア派、メイク派と様々な流派がある。他の流派の人をヘア派に鞍替えさせるために強い言葉で書いているんだよ」とおっしゃっていました。著者になるには、自分の主張を強く文章に反映させていくことが必要なんですね。私は自分の主張をいかに相手に伝えるか、腐心しながら友達とおしゃべりしているときがあるので、近いものを感じました(笑)。

Q15:著者になる、つまり自分の名前で原稿を書くときに一番大事な要素だとよく言われているのは、「言葉があるかどうか」です。その人ならではのオリジナリティのある表現があるかどうか。

ゼミの最終課題(自著の企画書を作る)で、みんなに格言を作ってもらいました。出版ゼミでは、「格言を作ってもらうと、著者になれるかどうかがわかる」と言われているそうです。 偉人が言った格言かのように、説得力のある強い言葉があるか、もしくはクスッと笑える言葉があるかどうか、それが著者になれるかどうかの資質なのかもしれないですね。

今後はレシピもAIが教えてくれるようになると思います。だからこそ、レシピ本も「その人ならではの言葉」がとても重要になってくるような気がします。レシピ自体の内容も大切だけれど、それをどんな言葉で表現するのか。そこにその人のオリジナリティが出てくるのです。

「この人のお菓子を作ったらわくわくしそう」「子どもが喜んでくれそう」、そんな感覚をその人らしい言葉で表現できる人が著者になっていくのだと思います。

A15:言葉が強すぎると人々が引いてしまうのではと思うのですが、それについてはどうお考えですか?

Q16:強い言葉というのは、必ずしも厳しい言葉ではなく、心に響く言葉のことだと思います。が、もちろん、引く人は引くかもしれません。でも、目立たないもの、つまり他との違いが見えにくいものには、ファンがつかないのではないかなとも思います。

ファンがついている人には、必ずアンチがいる気がします。アンチがいるというのは、想定していた読者層以外のところにも届いたということでもあるんですよね。アンチが誰もいないというのは、売れていない・知られていないということに近いのかもしれない。

A16:さとゆみさんのお話を聞いて、どこにボールを投げるのか決めることが大事なのかなと思いました。投げる先を自分でしっかり意識していれば、仮に否定的な意見をもらっても、それは自分の投げたボールが読者層以外の人に届いたと思えそうです。

Q17:お料理のレシピや、私が専門にしている髪のケアの仕方などは、誰かの生活の役に立ちたいと思って書いているものなので、流派の違う人を傷つけにいっているわけではないと思います。だから「私はこの方法がベストだと思っているので、よかったら試してください」という自分の答えは、出していっていいと思うんです。「あれもいいけどこれもいいよね、やっぱりこれもありかもしれない」となったら、読者さんが迷ってしまいます。自分のその時点での答えを提示するのは、著者として書いていくためにはとても大事なことだと思います。

自分の名前で書き始めると、コメントや質問がきたり、読者さんと双方向のやりとりになっていきます。そうなると、また様々な学びがあって、どんどん楽しくなっていくと思いますよ。

A17:Instagramでシフォンケーキの発信をしていると、私の失敗を見た人からDMやコメントが届きます。どこの馬の骨ともわからぬ私に、みんな優しくアドバイスをしてくれるんです。一人でやっていたら味わえない、双方向のコミュニケーションになっているなと感じています。

Q18:ぜひ発信を続けてくださいね。100台作り終わる頃には、 コアなファンの人たちがついていると思います。時々、近況を教えてください。私も炭ちゃんのSNS、見にいきますね。

A18:ありがとうございます。たいてい、やかましくしていますが(笑)。いい報告ができるように頑張ります。


(構成・文/玄川 阿紀)

プロフィール
炭田 友望(すみだ ともみ)

編集ライター&お菓子専門シェアキッチンマネージャー。
コピーライターとして広告制作に12年、ディレクターとして「料理」に関する企画制作に2年携わる。2022年にフリーランスとなり、ライターの傍ら「お菓子専門シェアキッチン」のマネージャーとしても働く。専門分野は“食”まわり。
合羽橋パトロールとスーパーマーケット・オオゼキでの買い物が、日々の潤い。シフォンケーキを100台焼く修行中。

note:https://note.com/writer_sumida
Instagram:https://www.instagram.com/writer_sumida