拙い原稿でも、絶対に否定されない。「完成させる」を何回も経験して自信になりました
ゼミ1期生にさとゆみがインタビュー。今回お話を伺ったのは、整体師で薬膳講師の竹田あやこさん。ライティングゼミ受講のきっかけや、書くことを通じて目指すゴールなどを伺いました。
Q1:今回は整体師と薬膳講師として活動されている、あやちゃんこと、竹田あやこさん。早速ですが、あやちゃんの具体的な活動について教えていただけますか?
A1:整体師として兵庫県三木市で整体サロンを営みながら、薬膳講師としては、主に日本リフレクソロジスト認定機構(JREC)主催の「くらし薬膳」講座を担当しています。そのほか、一般の方向けの講座や、カフェスペース企画のイベントなどにも登壇しています。
Q2:整体と薬膳、2つの活動を並行しているんですね。
A2:はい。ただ、整体も薬膳も、「体を整える」という意味で繋がっていると考えています。整体は体の外側から、薬膳は食事を通じて体の内側から、と内外からのアプローチで体を整えていくお手伝いをしたくて、今の形になりました。
Q3:あやちゃんが今回ライティングゼミを受けてくださったのは、どんな理由でしょうか?
A3:整体施術や薬膳講座のほかにも、JRECさんの会報誌やホームページなどでコラムを執筆しているのですが、去年あたりから文章を書くことに悩んでしまって、思うように書けなくなってしまったことがきっかけです。
もともと書くことが好きで、小学校の卒業文集も「将来の夢は作家」と書いたほどなんです。だから、薬膳コラムのお話をいただいたときはとても嬉しかったですし、楽しみながら一生懸命書いていました。ただ、「上手に書きたい」と欲が出てしまったからか、突然どうやって書いたらいいのかわからなくなり、行き詰まってしまって。そんな折にさとゆみさんの著書『書く仕事がしたい』に出合ったんです。
読んで「この本、すごい!」と思って。本の中に書く以外のことまで色々と書かれていて、フリーランスとして働く私が抱えていた、書くこと以外の悩みや葛藤まで解決できそうだな、と感じたんです。それから、さとゆみさんのことを調べてみたところ、ライティングゼミの募集を見かけたので、すぐに申し込みました。ラッキーなタイミングでした。
Q4:ありがとうございます。実際に講座を受けてみて、いかがでしたか?
A4:書くことは初心者の私でも、参加して良かったと思える学びが、いっぱいありました。まず、書くために必要な知識や、準備すべき点が分かったことです。
具体的には、テーマや読者ターゲットの絞り方、方向性や目的の考え方、それから「エピソードファースト」のような文章の型などを教えていただきましたよね。これらを準備しながら、書く体制を整えていくことが学べました。
私がコラム執筆で行き詰まったときは、「誰に向かってこの文章を書いているんだろう?」と途中で思ったり、自分の考えを文章としてうまく構成できなくて立ち止まったりしていたんですね。そういった悩みに対しても、今回学んだような準備が必要で、そこがクリアになれば書きやすくなるのか、と思えました。文章を書くために、何を準備して、どういう風に組み立てていけばよいのか。書くことの設計図というか、順番がわかりました。すごく楽しいゼミでした。大変でしたけど(笑)。
Q5:大変でしたか(笑)。特にどういう点が大変でしたか?
A5:課題もそうですし、あとは、すべてが初めてのことだったことも苦労しました。たとえば「雑誌の企画を考える」など、いろんな課題がありましたよね。それまで雑誌をそんな目で見たことがなかったし、専門用語もまったく知らなかったので、「リード? キャプション? 何のこと?」みたいな感じで(笑)。ただ、今まで知らなかったことが知れたことは、とても大きな学びでした。
Q6:雑誌の研究課題を通じて、何か変わりましたか?
A6:雑誌や記事を見る視点が、大きく変わりました。「リード」という単語は初めて知りましたが、リード文を冒頭につけることの大切さもわかり、目から鱗でした。今まで雑誌も読んできていたはずなのに、「私はいったい何を見てきたんだろう?」ということがいっぱいあって、愕然としました。
ただ、一度ゼミで学んでからは、自然といろんなことが目に入ってくるようになったんですよね。雑誌でもウェブでも、記事を読むときには「こんな書き方をするんだ、すごいなぁ」といちいち感動してしまいます(笑)。
Q7:その視点を取り入れることが、思っている以上に、書くことの近道なんですよね。この講座では、何年経っても役に立つような武器を手に入れてほしいと思っていました。自分がいざ書いてみてうまくいかなかった部分などを意識して人の文章を読むと、知識も増えるし書く力に繋がると思っています。
A7:私はまだ一歩踏み出したくらいのところで、今すぐどんどん書けるというわけではなくて準備運動の段階ですが(笑)。でも、以前と比べて書き方が見えるようになりました。たとえば、課題で初めてイベントレポートを書いたときは、どのように書けばいいのか全くわからなくて。でも、ほかの人が書いた原稿を読むと、同じテーマなのに、みんな書いていることがまったく違う上に表現の仕方も多様で。「こんなにバリエーションがあるんだ!」と驚きましたし、一人ひとりの原稿を読むと、その人の声が聞こえてくる感じがしました。
Q8:同じテーマを取り上げるのでも、ライターそれぞれで感じとるものが変わるから、仕上がる原稿に違いが生まれますよね。そこがAIではなく、ライターが書く意味とも言えますよね。
A8:インターネットで検索した「イベントレポート」を読んでみても、うまく掴めなかったんです。それでも、期日までに何とか書いて提出すればさとゆみさんが添削してくれると思ったので、この際どれだけ下手でも別にいいじゃないか、という気持ちで取り組みました。
そのあと公開してもらったほかのメンバーの原稿を読んで、みんなすごく上手だったことに、正直落ち込みましたけど、ほかの仲間が取り組んだ文章を読む機会はたくさんの気づきに繋がりました。イベントレポートを見るのは初めてではないはずなのに、ここでも、「本当に今まで何を見てきたんだろう?」と思いました。
Q9:それはきっと、書くことによって、世界を解像度が高く見られるようになってきたんでしょうね。上達への第一歩ですよ。そして、基本的にライターの仕事は一案件につき一発注なので、同じ案件を複数のライターが書くことって基本的にない世界なんです。なので、今回20名以上の課題を見る機会は勉強になるし、きっと楽しかったんじゃないかな、と思います。あれ、辛かったのか(笑)
A9:いやいや楽しかったですよ(笑)。課題がきつかったことにはきつかったですけど(笑)、確実に達成感はありました。とりあえず提出しなくちゃいけないから、まずは一度完成させるじゃないですか。
今まで、私は執筆が止まってしまうと「このテーマで書くのはちょっと無理だ、どうしたらいいかわからないからテーマを変えよう」と、方向転換することも多くて、書きかけの原稿が溜まっていたんですね。それもあって、完成させることの大変さを痛感していましたが、ゼミの中では「形にして、完成させる」ことを何回も経験できたので、自信に繋がりました。
Q10:何よりも書き上げて原稿を外に出すことがいちばん大事だし、そう考えると締め切りって偉大ですよね。
A10:本当ですね。ゼミで教わったことの中では、推敲のポイントも勉強になりました。
私は伝えたいテーマが薬膳なので、どうしても読者にとって不慣れな言葉が出てきやすくて。「わかりやすく伝えたい」と思っているのに、言葉が難しくなりがちなので、それも含めてどうやって推敲すればいいか、悩んでいたんです。文章でわかりづらさやトゲトゲしさなどの引っかかる部分があると、本当に届けたい言葉が届かなくなってしまうから「小骨」を抜いて文章をブラッシュアップしていく、ということを学んで、推敲するための視点を得られました。
ほかにも、接続詞の使い方が自分の課題だと気づくことができました。添削で何度か接続詞の使い方に赤入れをいただいたので、適切な接続詞を使えているか、という視点で文章を見返すことも意識するようになりました。不思議なことに、自分の原稿だとわからないんですよね。
Q11:結論を知っている自分の原稿だと、書き手の脳内ではつじつまが合っているから、文章の違和感や矛盾を見落としやすいのかもしれないですね。これはプロの書き手でも陥りやすいんですよ。他人の原稿の方は、読み終えるまで結論がわからない分、文章の違和感に気づきやすいんです。やみくもに書くだけではなく、チェックする目線を身に付けて意識して書き続けていったら、きっとうまくなると思いますよ。
A11:書き続けるうちに、少しずつ向上できたらいいなと思います。さとゆみさんが、形容詞をばーっと壁一面にふせんで貼って、どの形容詞が良いのか考えながら書くという話も、すごく興味深かったです。本当にたくさんのことを学びましたが書くこと以外の面では、さとゆみさんの教え方がすごく参考になりました。
Q12:講師業をしているあやちゃんにとって、どういった点が参考になったのか、後学のために聞いてもいいですか?
A12:最初、さとゆみさんが「このゼミに入ったみんなは、お互いにいちばん優しい顔で接してね」と言ってくれたことが、すごく印象に残っています。初めての場で緊張していたんですが、とても安心できましたし、実際にみなさんとても優しい素敵なメンバーでした。
ほかにも、講座の進行中は、冒頭で前回の復習から始まったり、講座の途中も要所要所でまとめを取り入れたりと、細やかな配慮が勉強になりました。
あとは、どれだけ拙い原稿でも、絶対に否定しないことがとてもありがたかったです。卒業式のときに講座の感想を発表する場面では、講座がキツかったことの話題が中心になっていましたが(笑)。でも、決して否定することのない、さとゆみさんという偉大な愛の人がいるから、そう言っても受け入れてもらえるだろうな、という気持ちがきっとゼミ生にはあったと思います。
Q13:「本当に、キツかった」という感想はみんな言ってましたよね(笑)。でも、あれほどキツいと言われた講座で、書くことがイヤにならなかったですか?
A13:全然なりませんでした。大変は大変でしたけど、形にしていく体験を何回もできたので、逆に自信がつきました。「これを一回やったから、次はきっとできる気がする」という気持ちです。
今も薬膳コラムを書いているので、学んだことを落とし込めるよう継続していきたいです。書かないといけない仕事以外にも、自分のブログやnoteも更新したいですし、特に講座の中でたくさん作った格言をテーマにしながら書いていこうと思っています。
Q14:ふだんの仕事に関する信念や伝えたいことを「格言にする」ワークですね。一般の人が知らないことや、意外だと思うことが「格言」として見出しになっていると、文章を読んでもらいやすいんですよね。ぜひ、ワークでつくった格言を使って書いてくれたら嬉しいです。
A14:私が考えた格言に対して、「え、そうなの? 知らなかった!」とさとゆみさんから言ってもらえて嬉しかったです。格言を考える作業自体も楽しめましたし、お客様にふだん説明していることを格言に落とし込む作業が、ブログや薬膳コラムのテーマをとらえるのにも良くて、とても実用的でした。
あれから、自分の仕事の中でも格言をすごく意識するようになりましたよ。思い浮かんだらスマホの中にメモしているので、そこからピックアップして記事にしようと思っています。ほかにもゼミでいろんなワークに取り組めたので、日常の見え方が変わりました。
Q15:あやちゃんのように伝えたいことがある人は、そのメッセージを文章にできると非常に良いんですよね。一生懸命考えて選んだ言葉が、文字としてその場に置かれることでさらに広がっていきますし、教わった人にとってもその言葉を思い出せる場所になりますから。
A15:そうですね。生徒さんやお客さんが、困ったときに思い出してもらえるような文章が書けたらいいな、と思います。
私は話すことが苦手なので、薬膳講座をするときも必ず本番と同じ設定で、リハーサルを一人でやっていたくらいなんです。それが、書くことで言葉が自分の中に落ち着くというか、きちんと形がまとまるようになって、話すときにも伝えやすくなりそうだな、と感じました。薬膳コラムをはじめとした書く場所があるので、体が覚えているうちにどんどん書いていきたいです。
Q16:たしかに書くことはリハーサルにも似ていて、一回書くと、話し言葉にも芯ができるように思います。講座での学びをいろんな場面で生かしていただけたら嬉しいです。
A16:講座ではみなさんとグループワークでお話する時間もたくさんいただけて、それが楽しみでもありました。書くこともそうですが、講師業では全部自分で考えて、一人でやる作業も多く、孤独な場面が多いんですよね。だけど、今回仲間ができて、お互いの悩みを打ち明けあったりして、「自分一人じゃないんだ!」と思えたことで、すごく気持ちも楽になりましたし、いただいたアドバイスも勉強になりました。
正直なところ、プロのライターの方もいらっしゃるゼミの中で自分は場違いじゃないか、と最初は不安だったんですよね。だけど、メンバーとオンラインでも密に交流できたおかげで、すごく仲良くなれたことは嬉しい想定外でした。最終回で初めてオフライン開催だったとき、会場までの移動中にゼミ生を見つけたんですよ。リアルに会うのは初めなのに「あ、この人たち仲間だ!」と感じました(笑)。
Q17:みんなが仲良くなれて、とても嬉しい。お互いに良い影響を与えながら、活躍していってほしいです。これから、あやちゃんはどんなことを目標にしますか?
A17:薬膳コラムの執筆はずっと続けていきたいですし、ブログでの発信もしながら、いつかは薬膳についての本も出したいと思っています。自分自身が大きくなっていくよりは、誰かの踏み台になりたくて(笑)。私の生徒さんや私をきっかけに、薬膳や整体を知ってもらった人が、身体も心もほぐれてくれたらいいな、と心から思うんです。落ち込んだときや困ったときは、力になれるよう励まして、その方の背中を押してあげたい。
だから、まずは自分自身がしっかり書くことを通じて、人に伝えていきたいです。私が書いて伝えるところから始めて、関心を持っていただいた方に「私の屍を超えていけ」じゃないですけど(笑)、身体も心もほぐれたその先でどんどん活躍してもらえたらな、と思っています。
Q18:応援していますし、いつか薬膳講座も受講してみたいです。最後に、2期を考えている方にメッセージをいただけますか?
A18:きっと、私のように「この講座に自分が行ってもいいのかな?」と受講を迷っている人もいると思うんです。そんな方は、まず申し込んでみて、それから考えたらいいのかな、と思います。すでに募集人数が定員を超えているとのことなので、さとゆみさんが選考されるそうですが、ご縁があればきっと会えるし、ご縁がなくても次のタイミングで巡ってくるはずです。
私のように自信がなかった人でも、きっと講座を通じて自信がつくと思うので、迷っていたらまずは一歩踏み出してみるといいのではないでしょうか。課題はたくさんありますが(笑)、とても勉強になりますし、さとゆみさんもゼミ生のメンバーもみんな優しいので、ほかの心配がないのはとても良いなと思っています。ぜひ背中を押したい、という気持ちです。
(文/構成・ウサミ)
プロフィール
竹田あやこ(たけだあやこ)高校卒業後、沖縄で8年間、その後ニュージーランドやオーストラリアなどでの暮らしを経験。帰国後、「心と体のトータルケアを」という想いから整体・アロマテラピーと共に薬膳を学び、中国政府認可組織である中華中医薬学会認定の「国際薬膳調理師」を取得。整体院運営と共に、薬膳師としてセミナー講師、薬膳コラムの執筆、薬膳メニューの開発なども手掛ける。
Twitter:@takeda185_smile
Website:http://www.ne.jp/asahi/natural/seitai/index.html