一度は著者になったものの、自分の文章に手を入れられる経験をしたくて受講しました

ゼミ1期生にさとゆみがインタビュー。今回お話を伺ったのは、ライブラリアンとしての著作を持ち、現在は「子連れ留学」や「リカ活」などについて発信をされている広瀬容子(ひろせようこ)さん。ゼミでの気づきや、今後の目標などを伺いました。

Q1:2016年に初めてお会いしたときは、東京湾の上でしたよね(笑)。その後、ご無沙汰しておりましたが、ゼミ1期生としてご参加くださってびっくりしました。早速ですが、普段どのようなお仕事をされているか、教えていただけますか?

A1:そうそう、勝間和代さんのクルーザーに、いろんな業界の方が集まるという会でお会いしたんですよね。その時からずっと、さとゆみさんの活動を追いかけておりました。
私は日本の大学では図書館・情報学、アメリカの大学院でライブラリー・サイエンスという分野で勉強したあと、図書館の業界で、仕事を続けています。2015年に独立してからは、フリーライブラリアンとして、図書館を取り巻くマーケットビジネスにいろんな形で携わっています。たとえば、今年の3月まで、CCCグループによる公共図書館の運営アドバイザーとして活動していました。そのほか、大学で情報検索の授業をしたり、海外の学術ジャーナル出版社向けに国内の研究者を対象としたマーケティング調査や、製薬メーカーの依頼で疾患に関する網羅的な文献調査などを行ったりしています。

Q2:初めて聞くようなお仕事ばかりです。「情報検索」を専門とする仕事というのは、どんな職業名で呼ばれるんでしょうか?

A2:職名としては「Searcher(サーチャー)」と言われますが、少し古い呼び名ですね。データベースや通信が主流になって、コンピューターを使った情報検索が普及すると、やみくもに調べるのではなく、専門性と信頼性が担保されたものへアクセスして、信頼のおける情報を探す技術が求められるようになりました。その情報検索の専門スキルを持つ技術者を、総称してサーチャーと呼ぶんです。今はインターネットやGoogle検索があたりまえの時代になったので、あまり目立たない職業かもしれません。

Q3:同じような仕事をなさっている人は、日本に何人くらいいるんでしょうか?

A3:私と同じように独立してやっている人は、肌感覚ですが、10人くらいだと思います。

Q4:すごく専門性の高い仕事なんですね。そんな容子さんが、ライティングの講座に来てくださったのはなぜだったんでしょうか?

A4:自分が書く文章の水準がわからず、プロの人からご指導いただきたいな、と思っていたんです。2018年に初めての単著『ライブラリアンのためのスタイリング超入門』という書籍を、上梓しました。図書館に関わる人であればみなが知っている出版社の樹村房さんから出版していただきましたが、文章を書くことは自己流だったんですね。原稿の校正で、「てにをは」など細かい部分の修正は入りましたが、構成や文章に対してのアドバイスをいただく機会がなくて。その後、商業出版社で本を出そうと考えていましたが、一度頓挫しているんです。そんな折、知り合ってからずっと注目していたさとゆみさんがライティングゼミを開講するという告知を見て、すぐに申し込みました。

Q5:実際に受けていただいた感想を教えていただけますか?

A5:講義の内容は、ライティングだけではなく、いろんな面で勉強になりました。中でも、「文章の最終目的は読者の行動変容を起こすことであって、テクニックに長けていることが良い文章というわけではない」ということが、大きな学びでした。私がこれまで書いてきた文章は、自分が知っていることを伝えるということに終始していて、そこまで読者について考えて書いたことがなかったんですよね。さとゆみさんがよく「解像度を上げる」と講座中におっしゃっていましたが、解像度を高く、興味をもって、観察する姿勢が、これまで欠けていたことに気づかされました。今までいかにわかりやすく伝えるか、という点に注力していましたが、自分の人間力を鍛えていかねば、と反省しました。

Q6:わかりやすい文章を書けるスキルは、ライターにとって非常に大切なことだと感じています。でも一方で、わかりやすいだけではなく、人の心を動かす文章にはある種の熱が必要だとも思います。容子さんは、「原稿になかなかパッションを乗せられない。熱量のある文章が書けるようになりたい」とおっしゃっていましたよね。

A6:そうなんです。ゼミの課題でも、もっと自分を追い込むべきだったと反省しています。ほかのゼミ生は、みんな「課題が大変だった」と話していましたが、私はそこまで自分を追い込まなかったから、もったいなかったなと今ふり返って思います。
仕事と同じように、締め切りを守るために何がなんでも完成させる、という点は大事にして課題に取り組みましたが、その反面、早く見切りをつけてしまったんです。本当だったら、ゼミ最後の「企画を立てる」課題では、「ねえねえ、聞いてよ!」とパッションを持っているコンテンツを企画に取り入れるべきところ、自分の中で無難なあたりさわりないテーマでまとめてしまったんですよね。この点は、もう少しもがき苦しむべきだったな、と感じました。

Q7:たしかに、ゼミは思いきって挑戦して、失敗できる場ですもんね。ご自身で熱量を持って語れると思われるテーマは、何かありますか?

A7:2つあります。1つは、子どもを4人連れて単身留学した経験についての「子連れ留学」の話です。あとは、リカちゃん人形に人間が着るようなリアルクローズを着せ替えする「リカちゃん活動」、略して「リカ活」の話です。連日、さとゆみさんがゼミ1期生のみなさんと対談される配信を聞きながら、「リカ活」用の服をちくちく縫っています(笑)。

Q8:どちらも、ぜひ書いてほしいです。

A8:「子連れ留学」はブログで少しずつ更新しながら、「リカ活」もInstagramでこつこつ投稿を続けています。先ほどお話しした、商業出版が叶わなかった話は、「子連れ留学」をテーマにしていた企画です。そのときは、企画会議にまで上げていただいたのですが、あいにく実現には至りませんでした。ゼミを受講した今なら、その企画が通らなかった理由がわかりました。

Q9:企画が通らなかった理由は、どのように分析されているんですか?

A9:切り口が甘かったのかな、と思います。さとゆみさんから、「通る企画」について教えていただきましたよね。人の困りごとを解決するような「課題解決の視点」、もしくは、子連れ留学といえばこの人、というふうに「選ばれるべき理由」が、通る企画の要になると。それを伺って、すごく腑に落ちたんですよね。企画が通らなかった時は、そこまでの気づきに至らなかったので、今のように考えられるのは、ゼミのおかげです。

Q10:留学に関してはコロナがある程度収束したら、などのタイミングもあると思いますが、刺さるテーマだと思うので、いつか書籍化が実現してほしいな、と心から思います。

A10:あとは、全方位配慮して「小骨を抜く」という話も、自分の姿勢を見直すきっかけになりました。というのも、今までの文章を書くシーンをふり返ってみると、自分のために書いていたんだな、と感じたんです。「何かを褒めるのに、誰かを落とす必要はない」という話もありましたが、この言葉もすごく自分の心に刺さったんですよね。これからは本当に気をつけようと思いました。

Q11:意図せず誰かに不快な思いをさせる必要はないんですよね。もちろん、一石を投じたいテーマを書くときは、意図して波紋を生む必要がありますが、意図せず炎上するのは避けたい。

A11:すごく勉強になるゼミでしたし、ゼミ生のパワフルさにも刺激をいただきました。1期生として集まったみなさんは、それぞれのメンバーが自分の専門領域でいろんな経験をお持ちでしたよね。私が子連れ留学を決心したのは、以前所属していた働くお母さんのためのコミュニティサイトから感化されたことが大きくあるんです。さとゆみさんのゼミの仲間たちも、そのコミュニティメンバーの雰囲気と似ていて、懐かしささえ感じました。

Q12:本当に、いろんな方がいらっしゃいましたよね。ちなみに、そこでの私の印象って、いかがでしたか?(笑)

A12:さとゆみさんの印象は、初めてお会いしたときの寡黙なイメージからずいぶん変わりました。ゼミを受講する前に参加した髪の毛についてのセミナーでは、「こんなに饒舌な方だったんだ」と、ギャップに驚きました(笑)。ゼミのオンライン講義では、セミナーのときと同じような印象でしたが、最終日に初めてリアルでお会いしたときは、すごくカジュアルで誰とでも対等に向き合う姿がとても印象的でした。
あとは、一人ひとりに対して、ここまで真摯に向き合ってくださったことが期待以上で、とてもありがたかったです。20人以上いるゼミ生の原稿にも、徹夜してまで細やかに添削してくださって、びっくりしました。

Q13:書くことについては私自身も答えを出せていない部分がたくさんあって、みんなと一緒に考えて、自分自身も勉強になる貴重な時間でした。

A13:Facebookグループでも、さとゆみさんがゼミで使われた資料を残してくださっているので、ゼミを修了した今でも読み返して勉強しています。とても貴重なコンテンツです。本当にこの講座はお値段以上でした。きっと、ほかの方にとっても、受けて後悔しないゼミだと思います。

Q14:この先も長く役立つことをお伝えしたかったので、そう言ってもらえて嬉しいです。容子さんは、今後どんなことをされたいと思っていますか?

A14:まずは、子連れ留学について、書籍の企画を温め直したいです。あとは、コロナの影響を受ける前から、旅行業も始めていて。最初は海外からきた方の図書館視察や研修などをお手伝いしたい気持ちで始めましたが、「リカ活」の撮影会ツアー企画などにも挑戦したいな、と考えています。ほかにも、樹村房さんと一緒に「図書館」をいろんな切り口で話すオンライン勉強会の開催を予定していますし、ライティングの仕事をご紹介いただけたので、、文章力が衰えないよう、さっそくその案件も始めるところです。

たくさん刺激をいただけて、本当に多くの学びに繋がるゼミでした。これからも、パッションを持てる分野へ、さらに挑戦していきたいと思います。

(文・構成/ウサミ)

プロフィール
広瀬容子(ひろせようこ)

慶應義塾大学文学部図書館・情報学科卒。学校司書を経て、民間企業にて大学・公共図書館向けの日本語データベースの制作・営業に従事。2003年、ピッツバーグ大学大学院に子連れ留学。大学図書館でレファレンスライブラリアンとして働くかたわら、同大学院にて図書館情報学修士号取得。帰国後、米国情報サービスベンダーに就職、トップ営業として表彰されるなど実績を残す。2015年独立。公共図書館指定管理のアドバイザリー業務や研修、視察のプランニングなどの取り組みを行う。東京農業大学院国際農業開発学科にて留学生向け情報検索の授業を英語で担当。旅行業務取扱管理者(国内)及び、旅程管理主任者(総合)。2019年9月、東京都に第三種旅行業登録。

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